歯科医院スタッフ面談のやり方とコツ|離職防止

歯科医院のスタッフ面談とは、院長とスタッフが定期的に1対1で対話し、不満や不安を早期に把握して信頼関係と定着率を高めるためのマネジメント手法です。

難しい専門技術ではなく、誰でも今日から始められるものですが、正しいやり方とコツを知らないまま自己流で行うと、かえってスタッフとの距離が広がってしまうこともあります。

この記事では、継承2〜3年目の歯科医院院長に向けて、面談の基本から具体的な進め方、忙しい中での工夫、そして自分だけで抱え込まなくてよい選択肢まで、順を追って解説します。

目次

「面談なんて必要ない」と思っていた院長ほど、後で後悔する理由

先代から医院を継いだばかりの院長先生の多くは、診療の腕には自信があっても、スタッフとの人間関係については手探りの状態だと思います。先代の時代を知る歯科衛生士や歯科助手から無意識に比較され、「前の院長先生の方がよかった」という空気を感じたことがある方も少なくないでしょう。そうした状況では、スタッフに嫌われたくない、辞められたくないという気持ちが先に立ち、あえて踏み込んだ話をしないまま日々の診療をこなしてしまいがちです。

しかし、コミュニケーションを避けることは、問題を先送りにしているだけで、解決にはつながりません。スタッフの不満や不安は、話す機会がなければ院長の目に見えないところで静かに蓄積していきます。そしてある日突然、「来月で退職します」という言葉とともに表面化するのです。「気づいたときにはもう手遅れ」という後悔を、面談は防ぐことができます。

先代と比較されるプレッシャーと、スタッフの本音が見えない怖さ

継承直後の院長先生からよく伺うのは、「スタッフが何を考えているか分からない」という悩みです。診療中は指示を淡々とこなしてくれるけれど、休憩室での会話には入りづらい。前院長の代からいるベテランスタッフには特に遠慮してしまう、というお話もよく耳にします。この「分からなさ」こそが、院内コミュニケーションの土台が不安定になっているサインです。

「辞めます」の一言に、面談の機会損失が凝縮されている

歯科衛生士・歯科助手の離職は、求人・採用・教育のコストだけでなく、患者様との信頼関係の再構築という大きな負担も院長にのしかかります。厚生労働省の調査でも医療・福祉分野の離職率は他業種と比べて高止まりする傾向が指摘されており、歯科医院も例外ではありません。私自身も、複数の歯科医院のコンサルティングに携わる中で、「まさか辞めるとは思わなかった」という院長先生の声を数えきれないほど聞いてきました。その多くは、退職を告げられる数ヶ月前から小さなサインが出ていたにもかかわらず、面談の機会がなかったために見過ごされていたケースでした。

スタッフが離れていく歯科医院に共通する3つの原因

面談をしていない、あるいは形だけの面談になっている歯科医院には、共通する原因がいくつかあります。ここでは代表的な3つを整理します。

原因1: 忙しさを理由に、1対1で話す時間を作ってこなかった

診療、経営、家庭と、院長先生の時間は常に圧迫されています。個人面談のための時間を確保することは、後回しにされがちな優先事項の典型です。しかし、面談頻度が「思い出したとき」「何かトラブルが起きたとき」だけになってしまうと、スタッフからすれば「困ったときにしか声をかけられない存在」という印象を持たれてしまいます。

原因2: 「傾聴」ではなく「説得」の面談になっている

たとえ面談の場を設けても、院長が一方的に方針や注意点を伝えるだけの時間になっているケースは非常に多く見られます。これは面談ではなく、指示伝達の延長にすぎません。本来の1on1面談は、院長が話すよりもスタッフの話を聞くことに重心を置くべきものです。

原因3: 面談の型がなく、院長の感覚頼みになっている

面談シートや聞くべき項目のテンプレートがないまま、その場の思いつきで質問をしてしまうと、話す内容がスタッフごとにばらばらになり、比較や振り返りができません。「なんとなく話す」を卒業しない限り、面談は雑談で終わってしまいます。私自身も歯科医院の面談に同席させていただく機会がありますが、事前に質問項目を決めていた医院とそうでない医院とでは、面談後のスタッフの表情に明確な違いが出ていました。型があることで、院長自身も安心して質問できるのだと実感しています。

歯科医院のスタッフ面談、正しいやり方の基本ステップ

原因が分かったところで、具体的にどう面談を組み立てればよいのかを見ていきましょう。

面談頻度の目安は「月1回15分」からで十分

面談は長時間である必要はありません。忙しい診療の合間でも実施できるよう、まずは月1回、15分程度の個人面談から始めることをおすすめします。頻度が高すぎると院長・スタッフ双方の負担になり、逆に半年に1回程度では変化に気づくのが遅れてしまいます。以下は職種・目的別の面談頻度の目安です。

対象・目的推奨頻度想定時間
新人スタッフ(入社1年未満)月1回15〜20分
既存スタッフの1on1面談月1回〜隔月10〜15分
評価面談(賞与・昇給時期)年2回30分程度
ベテラン・リーダー職隔月〜四半期15〜20分

面談シートを使って、話す内容を型にする

面談シートには、「最近困っていること」「業務量について」「人間関係について」「今後やってみたいこと」といった項目をあらかじめ用意しておきます。フリーフォーマットで話すよりも、シートに沿って進めた方がスタッフも話しやすく、院長も聞き漏らしを防げます。面談シートは一度作れば使い回せるので、最初の負担さえ乗り越えれば継続の負担は大きく減ります。

歯科衛生士・歯科助手など職種別に聞くべきポイントを変える

歯科衛生士は診療技術やキャリアアップへの意欲、歯科助手は業務量や人間関係のストレスなど、職種によって悩みの質が異なります。歯科衛生士には「担当患者様との関係で困っていることはないか」、歯科助手には「診療補助と受付業務のバランスはどうか」といったように、質問の切り口を変えることで、より本質的な悩みに近づけます。同じ質問をみんなに投げかけるだけでは、本当の声は拾えません。

面談を成功させるコツ—傾聴とコーチングの技術

型ができたら、次は面談の「質」を高めるコツです。ここでコーチングの考え方が役立ちます。

「聞く8割、話す2割」を徹底する

面談中、院長がつい自分の考えを話しすぎてしまうのはよくあることです。意識して「聞く8割、話す2割」を心がけるだけで、面談の雰囲気は大きく変わります。スタッフが話し始めたら、途中で意見を挟まずに最後まで聞く。これだけでも、傾聴の姿勢は十分に伝わります。

評価面談と1on1面談を混同しない

給与や評価に関わる評価面談と、日々の悩みを聞く1on1面談は目的が異なります。評価の話をする場で本音を引き出そうとしても、スタッフは評価を気にして本心を話しにくくなります。この2つを分けて実施するだけで、面談の効果は大きく変わってきます。

心理的安全性を作る一言の使い方

たとえば「今の話、率直に言ってくれてありがとう」という一言を面談の最後に添えるだけで、スタッフは「この場では正直に話しても大丈夫だ」という心理的安全性を感じます。逆に、話した内容を後で本人に不利な形で持ち出してしまうと、二度と本音を話してもらえなくなります。私自身も、ある歯科医院で院長先生が面談内容をその場でスタッフ本人にフィードバックせず、後日別のスタッフ経由で伝わってしまったことで、面談への信頼が一気に崩れた場面に立ち会ったことがあります。面談で聞いた内容の扱い方一つで、信頼関係は簡単に壊れてしまうのだと痛感しました。

忙しくて時間が取れない院長のための現実的な工夫

「正しいやり方は分かったが、そもそも時間がない」というのが、多くの院長先生の本音だと思います。ここでは現実的な工夫を紹介します。

診療の合間15分を面談時間に変える方法

昼休憩の後半15分や、診療終了後の掃除の時間の一部など、既存のスケジュールの中に面談枠を組み込む方法があります。新たに時間を作り出すのではなく、今ある時間の使い方を組み替えるという発想が現実的です。

それでも難しい場合の面談代行という選択肢

院長自身がどうしても時間を確保できない、あるいは院長が聞き手だとスタッフが本音を話しにくいという場合には、外部の専門家による面談代行というサービスもあります。第三者が定期的にスタッフの声を聞き、まとめて院長にフィードバックする形式であれば、院長の時間的負担を減らしながら、院内コミュニケーションの質を維持できます。

院長自身がやる面談と第三者が行う面談の違い

どちらが優れているというより、目的や状況によって使い分けるものだと考えるとよいでしょう。

比較項目院長自身が行う面談第三者(面談代行)が行う面談
話しやすさ評価者本人のため遠慮が出やすい利害関係がなく本音が出やすい
院長の時間的負担大きい小さい
継続のしやすさ診療多忙で途切れがち定期実施が安定しやすい
得られる情報の深さ表面的になりやすい深い悩みまで引き出しやすい

どちらか一方を選ぶのではなく、両方を組み合わせることが最も効果的です。院長との面談で信頼関係を築きながら、第三者面談で本音を補完してもらう、という併用の形が理想的だと私は考えています。

面談導入後、院内はどう変わるのか—定着率と信頼関係の変化

最後に、実際に面談を導入するとどのような変化が起きるのかをお伝えします。

小さな変化のサイン: 雑談が増える、報連相が早くなる

面談を継続すると、まず変わるのは日常の空気です。診療中の何気ない雑談が増えたり、ミスやトラブルの報告が以前より早く院長に上がってくるようになったりします。これは、スタッフが「話しても大丈夫」という安心感を持ち始めた証拠です。

半年〜1年で見える離職率の変化

私自身が関わったある歯科医院では、月1回の個人面談を導入してから1年で、それまで年に2〜3人出ていた離職が0人になったという事例がありました。特別なことをしたわけではなく、面談シートに沿って月1回、スタッフの話を丁寧に聞き続けただけです。この医院の院長先生は「もっと早くやっておけばよかった」とおっしゃっていましたが、これはまさに多くの継承2代目・3代目院長に共通する感想だと思います。

まとめ: 面談は「先代との比較」から抜け出す最初の一歩

先代と比較され、スタッフとの関係に不安を抱えながら診療を続けることは、決して楽なことではありません。しかし、面談という仕組みを持つことで、院長自身の言葉でスタッフと向き合い、比較ではなく「今の院長との信頼関係」を新たに築いていくことができます。

今日からできる小さな一歩

まずは1人のスタッフと、15分だけ話す時間を作ることから始めてみてください。面談シートがなくても、「最近どう?」という一言からで構いません。継続することで、少しずつ院内の空気は変わっていきます。

自分たちだけで抱え込まなくていい

とはいえ、日々の診療に追われる中で、すべてを自分だけでやろうとする必要はありません。PlumChanでは、歯科医院向けのスタッフ面談代行やコーチング研修を通じて、院長先生とスタッフの間の橋渡しをお手伝いしています。まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。

よくある質問

Q1. スタッフ面談はどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. 月1回15分程度から始め、無理のない頻度で継続することが効果的です。

Q2. 面談で何を話せばいいかわかりません。何を聞くべきですか?
A. 業務量、人間関係、今後の希望を面談シートに沿って聞くと話しやすくなります。

Q3. 面談をすると逆に不満が噴出しませんか?
A. 一時的に出ることはありますが、早期把握できれば離職防止につながります。

Q4. 忙しくて面談の時間が取れない場合はどうすればいいですか?
A. 休憩後の15分を活用するか、面談代行サービスの利用も検討してください。

Q5. 院長自身が面談するのと第三者が面談するのとでは何が違いますか?
A. 第三者は利害関係がなく、スタッフが本音を話しやすい傾向があります。

この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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