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歯科医院のスタッフをリーダー・チーフに育てる方法

歯科医院のスタッフをリーダー・チーフに育てる方法

歯科医院の「リーダー・チーフ育成」とは、スタッフに段階的に権限と責任を委ね、院長に依存しない自律したチーム運営ができる人材を計画的に育てるためのマネジメント手法です。承継したばかりの院長にとって、この定義は決して机上の理論ではありません。前院長のもとで長年働いてきたベテランスタッフと、まだ関係性の浅い自分との間で、誰にリーダーを任せればいいのか、そもそも自分にその資格があるのかと、静かに悩んでいる方は少なくないはずです。

この記事では、以下の3点がわかります。

  • スタッフがリーダー・チーフに育たない本当の原因
  • リーダーに向くスタッフの見極め方と抜擢のタイミング
  • 昇格を伝える面談での具体的な声かけとフォローの方法

私自身、医院のスタッフ間の人間関係やリーダー不在の悩みに向き合う院長先生方に数多く伴走してきました。今日から実践できる具体的な方法を、一緒に見ていきましょう。

目次

承継医院で「次のリーダー」が育たない本当の理由

承継して2〜3年目の院長先生からよくいただく相談が、「誰も自分から動いてくれない」「前院長のときはもっとスタッフがまとまっていた気がする」という声です。この違和感の正体は、決してスタッフの資質の問題ではなく、リーダー不在という構造そのものにあります。

前院長時代の「阿吽の呼吸」が通用しない今

前院長が長年築いてきた医院では、明文化されたリーダーがいなくても、古参スタッフが暗黙のうちにリーダー的な役割を担っていたケースが多くあります。院長との信頼関係が長いからこそ成立していた「阿吽の呼吸」であり、それは属人的な仕組みでした(古参スタッフとの向き合い方はこちらで詳しく解説しています)。承継直後の院長とスタッフの間には、まだその蓄積がありません。だからこそ、意図的に役割と責任を言語化し、リーダーを「制度」として立てる必要があるのです。

「誰かがやってくれる」が招く属人化

リーダーが不在の医院では、新人指導もクレーム対応も、結局は院長か一部の古参スタッフに集中します。ある地方都市の歯科医院では、承継2年目の院長が「自分がいないと現場が回らない」状態に陥り、休診日も電話対応に追われていました。原因を整理すると、歯科衛生士5名のうち誰一人として「自分がチームをまとめる」という役割を与えられていなかったことが分かりました。院長が頑張るほど、逆にスタッフの自立が遠のいてしまうという皮肉な構造が、多くの医院で起きています。

さらに厄介なのは、この状態が数年続くと「リーダーがいなくても回る医院」ではなく、「院長が疲弊しているだけの医院」になってしまうことです。スタッフからすれば、院長が何でも引き受けてくれる状態は居心地がよく、あえて役割を求めようとはしません。だからこそ、院長の側から意図的に役割を手放し、次のリーダーを育てるという発想の転換が必要になります。

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なぜスタッフがリーダーに育たないのか──3つの原因

スタッフの能力が低いからリーダーが育たないのではありません。育成の仕組みがないまま「誰か育ってくれないか」と待っているだけでは、何年経っても状況は変わらないのです。原因は大きく3つに整理できます。

原因1 育成計画がなく「その場任せ」の抜擢

多くの医院では、勤続年数や年齢だけでなんとなくチーフが決まり、具体的な育成計画がないまま「今日からお願いね」と丸投げされます。本人はリーダーとして何を身につければよいのか分からず、結果的に「業務量が増えただけの昇格」になってしまいます。

原因2 院長がすべてを抱え込み権限委譲できない

前院長と比較されることへの不安から、判断のすべてを自分で抱え込んでしまう院長先生は少なくありません。しかし院長がすべての決定権を握ったままでは、スタッフは「どうせ院長が決めるから」と考える癖がつき、リーダーとしての判断力が育つ機会そのものが失われます。

原因3 スタッフ自身がリーダー像を描けない

歯科衛生士や歯科助手として採用された多くのスタッフは、そもそも「マネジメント経験」を積む機会がないまま現場に立ち続けています。日本歯科衛生士会が実施した調査でも、キャリアパスとして管理職を明確に意識できているスタッフは限定的であるという傾向が指摘されています。「自分がリーダーになる姿」を一度も想像したことがないスタッフに、いきなり昇格を告げても戸惑うだけなのです。

リーダー・チーフに向くスタッフの見極め方

原因が分かったところで、次に大切なのが「誰を次世代リーダーとして育てるか」の見極めです。臨床スキルの高さだけで選んでしまうと、抜擢後にチームが崩れるケースが少なくありません。

臨床スキルだけでは判断しない

臨床技術が高いスタッフが、必ずしもリーダーに向いているとは限りません。技術力に優れていても、他のスタッフへの配慮や後輩指導への関心が薄い場合、チーフに昇格させると周囲との軋轢を生むことがあります。院長として見るべきは「技術」ではなく「周囲への影響力」です。

「巻き込み力」と「相談される力」に注目する

リーダー候補を見極める上で有効な視点は、「他のスタッフから自然に相談されているか」「新人が困ったときに誰の名前を挙げるか」です。これは役職や勤続年数とは無関係に表れる特性です。院内ミーティングやランチの様子を観察するだけでも、誰が周囲から信頼を集めているかが見えてきます。

抜擢前に小さな役割を任せて反応を見る

いきなりチーフという肩書を与えるのではなく、「新人のOJT担当」「器材発注のとりまとめ」など、責任の小さな役割から任せてみることをお勧めします。ある医院では、正式なチーフ昇格の3か月前から歯科衛生士の一人に「朝礼の進行役」を任せたところ、本人の自信と周囲からの信頼が同時に育ち、抜擢時の反発がほとんどありませんでした。小さな「任せる」の積み重ねこそが、抜擢を成功させる一番の近道です。

小さな役割を任せる際は、結果だけでなくプロセスを見ることも大切です。うまくいかなかったときにどう振り返るか、周囲にどう相談するかという姿勢の中にこそ、リーダーとしての素質が表れます。完璧にこなせたかどうかよりも、任された役割にどう向き合ったかを評価の軸に置くようにしてください。

歯科医院でリーダーを育てる具体的なステップ

見極めた候補スタッフを実際に育てていくには、感覚ではなく手順に基づいた育成計画が欠かせません。ここでは4つのステップに分けて解説します。

ステップ1 育成計画を1年単位で言語化する

「半年後にはこの業務を任せる」「1年後にはミーティングの進行を担当してもらう」というように、育成のゴールと期限を紙に書き出しましょう。口頭だけの約束は、忙しい診療の中でうやむやになりがちです。育成計画を文書化することで、院長自身の意識も変わり、スタッフに一貫したメッセージを伝えられるようになります。

ステップ2 権限委譲は「任せる範囲」を明確にする

権限委譲でつまずく最大の原因は、「どこまで任せていいのか」が曖昧なことです。例えば「シフト調整の一次案作成まではチーフに任せ、最終承認は院長が行う」というように、任せる範囲と院長が関与する範囲を明確に線引きすることで、チーフ本人も安心して判断できるようになります。任せた範囲については、たとえ院長から見て不十分な判断であっても、まずは一度受け止める姿勢が重要です。任せたはずの判断を院長がすぐに覆してしまうと、チーフは「結局は院長の言う通りにするしかない」と感じ、次第に自分で考えることをやめてしまいます。

ステップ3 1on1でリーダーとしての自己効力感を育てる

月に1回でも、リーダー候補と1対1で話す時間を設けてください。進め方の型は1on1ミーティングの導入方法【7ステップ】が参考になります。「あの対応、よかったよ」という具体的なフィードバックの積み重ねが、リーダーとしての自信につながります。私自身も、院長先生から「スタッフとどう話せばいいか分からない」というご相談を数多くお受けしてきました。その多くは、話す時間そのものが不足していることが原因でした。時間を確保するだけで、関係性が驚くほど変わることを何度も見てきています。

ステップ4 チーフ昇格後もフォローし孤立させない

昇格させて終わりにしてしまうと、新任チーフは「自分だけが板挟みになっている」と孤立感を抱きやすくなります。昇格後こそ、院長からの継続的な声かけとフォローアップが必要です。これは院長自身が抱える孤独感と同じ構造の問題でもあります。任せたら任せきりにせず、昇格後の孤独こそ院長が支える番だという意識を持ってください。

チーフ昇格を伝える面談・声かけの具体例

育成計画が整っても、実際に昇格を伝える場面でつまずいてしまう院長先生は多くいらっしゃいます。伝え方ひとつで、本人の受け止め方も周囲の反応も大きく変わります。

抜擢を伝えるときのセリフ例

「〇〇さんがいつも新人の相談に丁寧に乗ってくれている姿を見ていて、次はチームをまとめる役割をお願いしたいと思っています。すぐに完璧にできなくて大丈夫です。まずは一緒に、任せる範囲を決めていきましょう」というように、期待と同時に「一人で抱えなくていい」という安心感を伝えることが重要です。抜擢の言葉だけを伝えて終わると、本人はプレッシャーだけを受け取ってしまいます。

昇格を歓迎しないスタッフへの配慮

チーフに選ばれなかった古参スタッフへの配慮も欠かせません。「〇〇さんにはこれまで通り、後輩指導の面で頼りにしています」と、役割の違いであって評価の優劣ではないことを個別に伝えることで、派閥化や不満の芽を未然に防ぐことができます。昇格を伝える相手だけでなく、伝えなかった相手への一言こそが、その後のチームの空気を決めるということを、多くの医院の現場で実感してきました。

院長ひとりで抱え込まないための伴走という選択肢

ここまでご紹介した育成ステップは、頭では理解できても、日々の診療に追われる中で一人で実行し続けるのは容易ではありません。特に承継直後の院長先生にとっては、前院長との比較というプレッシャーも重なり、リーダー育成に十分なエネルギーを割けないのが実情です。

第三者が入ることでリーダー育成が進む理由

院長とスタッフの間に第三者のコーチや面談代行者が入ることで、院長には言いにくい本音をスタッフが話しやすくなり、リーダー候補の本当の適性や不安が見えてくることがあります。ある医院では、外部のコーチングを導入したことで、これまで自信がないと辞退していたスタッフが「実はチーフをやってみたい」と初めて本音を語ったというケースもありました。第三者の存在は、院長の負担を減らすだけでなく、育成そのものの精度を高めてくれます。

PlumChanのコーチング・面談代行でできること

PlumChanでは、医科・歯科医院に特化したコーチングとスタッフ面談代行を通じて、リーダー候補の見極めから、昇格後のフォロー面談までを継続的にサポートしています。院長おひとりで抱え込まず、外部の視点を取り入れることで、リーダー育成のスピードと定着率は大きく変わります。リーダー育成は院長一人の仕事ではなく、チームで取り組むプロジェクトだと捉え直すことが、承継医院を次のステージへ導く第一歩になります。

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よくある質問

Q1. リーダーやチーフに向いていないスタッフに無理に昇格を打診してもよいですか。

無理な打診はお勧めしません。本人が望んでいない状態での昇格は、離職リスクを高める原因になります。まずは小さな役割を任せ、本人の反応を見ながら段階的に打診することが大切です。

Q2. チーフに昇格させたら給与も見直すべきですか。

役割と責任が増える以上、何らかの処遇面での配慮は必要です。金額の大小よりも、役割の変化に見合った評価をしているという姿勢を明確に伝えることが、スタッフの納得感につながります。

Q3. リーダー候補が複数いる場合、どう選べばよいですか。

臨床技術だけでなく、周囲からの信頼度や相談されている頻度を基準に選ぶことをお勧めします。候補が複数いる場合は、それぞれに異なる役割を段階的に任せ、適性を見極める期間を設けるとよいでしょう。

Q4. 育成計画はどれくらいの期間で立てればよいですか。

半年から1年単位を目安に、具体的な到達目標を設定することをお勧めします。短すぎると本人の負担が大きくなり、長すぎると育成の意識が薄れてしまいます。

Q5. 昇格後にチーフが孤立してしまった場合、どうすればよいですか。

早めに1on1の頻度を増やし、抱えている悩みを言語化する場を設けてください。院長だけで対応が難しい場合は、外部のコーチングや面談代行を活用することも有効な選択肢です。

歯科医院におけるリーダー・チーフ育成は、一朝一夕には進みません。しかし、育成計画を言語化し、小さな権限委譲を積み重ね、昇格後も孤立させずに支え続けることで、院長に依存しない自律したチームは確実に育っていきます。前院長との比較に悩む日々の中でも、次のリーダーを育てることは、あなた自身の医院を次の世代へつなぐための大切な一歩です。まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。

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この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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