「コーチングを受け始めたけれど、スタッフにはなんとなく言い出しにくい」。そう感じている院長は、実はとても多いです。承継したばかりの二代目・三代目院長にとって、「経営者としてまだ未熟だと思われたくない」「弱みを見せたくない」という気持ちが先に立ち、こっそり通う方も少なくありません。院長がコーチングを受けているという事実は、隠すべきものではなく、伝え方次第でスタッフとの信頼構築の材料になります。この記事を読むと、伝えるべきかどうかの判断基準、伝える場合のメリットと注意点、そして実際にどう言葉にすればいいのかの具体例の3点がわかります。特に前院長との比較に悩みやすい二代目・三代目院長にとって、この判断は日々の関わり方そのものに直結するテーマです。私自身、コーチとして多くの院長と関わる中で、「コーチングを受けていることをスタッフに話したら、むしろ関係が良くなった」という声を数多く聞いてきました。伝えるべきかどうかは、正解が一つに決まる話ではありません。医院の規模やスタッフとの関係性、院長自身の性格によっても最適な答えは変わります。だからこそ、判断材料となる考え方をこの記事で整理していきます。
院長のコーチング受講を「伝えるかどうか」で悩む理由
そもそも、なぜ多くの院長がこの問題で悩むのでしょうか。「経営のことで人に相談している」と知られることへの抵抗感こそが、悩みの正体です。歯科医院の院長は、診療の専門家であると同時に組織の経営者でもあるという二重の役割を担っています。
「弱みを見せたくない」という院長心理
前院長から医院を継いだばかりの二代目・三代目院長は、特に「自分はまだ半人前だと思われたくない」というプレッシャーを抱えがちです。コーチングというと「悩みを相談している」「弱さの表れ」と受け取られるのではないかという不安から、受講の事実を隠してしまう方が少なくありません。私が担当した院長の中にも、最初の数ヶ月は「セミナーに行っている」とだけ伝えていた方がいました。理由を伺うと、「経営がうまくいっていないと思われたくない」「院長は完璧であるべきという先入観がある」という声が返ってきました。こうした心理は決して珍しいものではなく、むしろ責任感の強い院長ほど抱えやすい感情だといえます。
スタッフ側は意外と気づいている
しかし実際には、月に一度決まった時間帯に院長が不在になる、その後の院内の雰囲気が変わる、といった変化からスタッフは「何かを学びに行っているらしい」と気づいていることがほとんどです。隠しているつもりが、かえって「話してくれない」という不信感につながっているケースも見受けられます。隠すことで守れる信頼より、失う信頼の方が大きいことがあります。あるスタッフからは「院長が何かに真剣に取り組んでいるのは伝わってきたけれど、教えてもらえないのが少し寂しかった」という声を後から聞いたことがあります。院長にとっては些細なことでも、スタッフにとっては「信頼されていないのでは」という不安につながることがあるのです。
コーチングを受けていることを伝える3つのメリット
伝えることへの不安がある一方で、実際に開示した院長からは前向きな変化の報告が多く寄せられています。
メリット①「学び続ける姿勢」が信頼につながる
「もっと良い医院にするために学んでいる」という姿勢は、スタッフにとって好意的に受け止められることがほとんどです。前院長と比較されがちな二代目・三代目院長にとって、「変わろうとしている」姿勢そのものが評価の材料になります。コーチングの基本的な考え方についてはコーチング型マネジメントとは?歯科医院での実践法でも解説していますので、あわせてご覧ください。前院長の診療スタイルや人柄と比較されがちな二代目・三代目院長にとって、「過去と同じであろうとする」よりも「より良くなろうとする」姿勢を見せることの方が、長期的な信頼につながりやすい傾向があります。
メリット②院長自身の変化に説明がつく
コーチングを受けると、院長の話の聞き方や質問の仕方が自然と変わっていきます。何の説明もなくその変化が起きると、スタッフは戸惑ったり、「急にどうしたんだろう」と勘ぐったりすることがあります。「最近、人との関わり方を学んでいて」と一言添えるだけで、変化への納得感がまったく違ってきます。実際に、質問の仕方が変わって「院長が最後まで話を聞いてくれるようになった」と感じたスタッフから、以前より相談しやすくなったという声が寄せられることも珍しくありません。理由がわからないまま変化だけが起きると、スタッフは戸惑いから距離を置いてしまうこともあるため、この一言があるかないかは意外と大きな差になります。
メリット③「相談していい文化」がスタッフにも波及する
院長自らが外部の力を借りて学ぶ姿勢を見せることで、「困ったときは一人で抱えずに相談していい」という文化が院内に伝わりやすくなります。統計的にも、経営層がオープンな姿勢を見せる組織ほど、従業員の相談行動が増える傾向が組織行動学の調査で示されています。歯科医院のように少人数で密なコミュニケーションが求められる職場では、この「相談していい空気」の有無が、日々の小さなミスの報告のしやすさにまで影響することがあります。ヒヤリハットの報告が上がりやすい医院ほど、大きなトラブルに発展する前に対処できているという傾向は、医療安全の観点からも重要な示唆を含んでいます。
伝える際に気をつけたい注意点
とはいえ、何でもかんでもオープンにすればいいというわけではありません。伝え方を誤ると、逆効果になることもあります。
注意点①「相談内容」まで詳しく話す必要はない
コーチングを受けていること自体は伝えても、その中で何を話しているかまで詳細に共有する必要はありません。「受けている事実」と「相談の中身」は切り分けて考えることが大切です。プライベートな悩みまで開示する必要はなく、あくまで「学びの場に参加している」という程度の情報で十分です。コーチングの場で語られる内容には、経営判断の背景や個人的な迷いなど、そのまま共有すると誤解を招きかねない情報も含まれます。何を伝え、何を伝えないかの線引きをあらかじめ自分の中で決めておくと、いざ聞かれたときにも慌てずに答えられます。
注意点②「スタッフも受けるべき」という圧力にしない
院長が前向きな体験をすると、つい「みんなも受けた方がいい」と勧めたくなりますが、これは押し付けになりかねません。まずは院長自身の変化を見せることが先で、スタッフへの導入はスタッフが必要性を感じてから検討するのが自然な流れです。順番を間違えると、「院長が受けたから自分たちも受けさせられる」という受け身の姿勢になり、本来得られるはずの効果が薄れてしまいます。
注意点③タイミングは「変化が見え始めた頃」がベスト
受講開始直後よりも、自分の言動に何かしらの変化が出始めたタイミングで伝える方が、スタッフにとって納得感があります。「最近院長の雰囲気が変わったな」と感じ始めた頃に種明かしをするようなイメージです。受講開始直後に「実は今日からコーチングを受けます」と宣言してしまうと、変化が伴わない間は「言っていることと違う」という印象につながりかねません。後継ぎ院長が抱えがちな孤独感についても後継ぎ院長が抱える孤独感の正体と向き合い方で詳しく触れていますので、参考になさってください。誰にも相談できずに一人で抱え込んできた院長ほど、コーチングという存在自体を打ち明けること自体に勇気が要るものです。
実際にどう伝える?具体的な言葉の例
理屈がわかっても、実際にどう言葉にすればいいか迷う院長は多いです。伝え方には正解がありますが、共通しているのは「気負わず、自然体で話す」ということです。ここでは、朝礼やミーティングで使える伝え方の具体例を紹介します。
朝礼・ミーティングでの伝え方
「実は最近、経営やコミュニケーションについて外部の方に相談しながら学んでいます。まだまだ勉強中ですが、より良い医院にしていきたいので協力してもらえると嬉しいです」といったシンプルな一言で十分です。長々と説明する必要はなく、むしろ簡潔な方が誠実に受け止められます。
1対1の場面での伝え方
信頼関係の厚いスタッフには、もう少し踏み込んで話してもいいでしょう。「正直、院長になってから前院長と比較されることも多くて、どう関わればいいか悩むことがあって。それで専門家に相談しながら学んでいるんです」というように、素直な気持ちを添えると、より深い信頼につながります。飾らない言葉で伝える方が、かえって誠実さが伝わりやすいものです。無理に前向きな言葉でまとめようとせず、悩んでいた過程も含めて話すことで、スタッフ側も「院長も同じ人間なんだ」と親近感を持ちやすくなります。
院長自身がコーチングを受け続けることの意味
伝え方の工夫と同じくらい大切なのが、院長自身が学び続ける姿勢を持ち続けることです。
一度きりでなく継続することの価値
コーチングは一度受けて終わりというものではなく、継続することで少しずつ言動が変わっていくものです。スタッフに伝えた以上、その後の変化が伴わなければ、かえって「言っていることとやっていることが違う」という印象を与えかねません。3ヶ月、半年と続けることで初めて言動の変化が定着し、周囲にも「本当に変わってきた」と実感してもらえるようになります。短期間で結果を求めすぎず、継続すること自体を目標に据えるくらいがちょうどよいペースです。
院長の変化がスタッフの安心につながる
私自身も、開業医の方々と伴走してきた中で、院長が変わろうとする姿を見たスタッフが「この人についていきたい」と前向きになっていく場面を何度も見てきました。2代目院長がスタッフの信頼を得るための具体的な方法は2代目院長がスタッフの信頼を得る5つの方法でも紹介していますので、あわせて参考にしてください。院長が変わっていく姿は、口で伝える何倍もの説得力を持ちます。前院長と比較されて苦しかった時期があったとしても、その経験があったからこそ今の自分がある、と話せるようになった院長の表情は、以前とは明らかに違って見えるものです。院長が変わろうとする姿は、何よりのメッセージになります。一人で抱え込まず、まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。
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よくある質問
Q1. コーチングを受けていることは全スタッフに伝えるべきですか?
必ずしも全員に詳しく伝える必要はありません。朝礼などで簡潔に触れる程度でも十分効果があります。信頼関係の深いスタッフにはもう少し踏み込んで話すなど、相手によって伝える深さを変えても問題ありません。パートタイムのスタッフと常勤のスタッフとで伝え方の濃淡を変えている院長もいます。
Q2. スタッフに「コーチングって何ですか」と聞かれたらどう説明すればいいですか?
「答えを教わるのではなく、自分で考えを整理するための対話の時間」といったシンプルな説明で十分です。答えを与えるティーチングとは異なり、本人の中にある答えを引き出す関わり方だという点を伝えると、イメージが湧きやすくなります。ティーチングとの違いを含めて詳しく知りたい場合は専門家に相談するのもよいでしょう。
Q3. コーチングを受けていることで、院長としての権威が下がりませんか?
むしろ逆の効果が報告されることが多いです。学び続ける姿勢は「弱さ」ではなく「誠実さ」として受け止められる傾向があります。権威は「完璧であること」よりも「一貫して誠実であること」から生まれるものだと捉え直してみると、不安が和らぐかもしれません。
Q4. スタッフから「自分たちにもコーチングをしてほしい」と言われたらどうすればいいですか?
まずは要望をきちんと受け止め、院内研修やスタッフ面談といった形で段階的に取り入れることを検討してください。いきなり全員に個別コーチングを導入する必要はなく、まずは院内研修のような形で少しずつコーチング的な関わり方を体験してもらうところから始める医院も多いです。
Q5. 伝えたことでスタッフの態度が変わらない場合はどうすればいいですか?
言葉だけでなく、日々の行動の変化が伴って初めて信頼につながります。伝えた直後に劇的な変化を期待するのではなく、焦らず、小さな行動の積み重ねを続けることが大切です。数ヶ月単位で振り返ったときに、以前より相談してくれるスタッフが増えていれば、それは着実に効果が出ている証拠です。変化のスピードには個人差があるので、他の医院と比較して焦る必要はありません。
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