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勤務医との連携で悩む院長へ|5つの解決法

勤務医との連携で悩む院長へ|5つの解決法

分院展開や患者数の増加にともなって勤務医を採用したものの、「指示がうまく伝わらない」「治療方針がバラバラ」「スタッフから見て院長と勤務医の関係がぎくしゃくして見える」——そんな悩みを抱えていませんか。

勤務医との連携不全は、スタッフの離職や患者満足度の低下にも直結する、院内人間関係の中でも見落とされがちな盲点です。継承2〜3年目の院長にとって、雇う側と雇われる側でありながら同じ「医師」として接しなければならない勤務医との関係は、スタッフとの関係以上に距離感が難しいテーマです。

私自身も、経営者と現場スタッフの間に立つ方々のコーチングを行う中で、「勤務医との関係で消耗している」という院長のご相談を数多く受けてきました。ある院長は「スタッフとの関係は研修や本で学べるのに、勤務医との関係については誰も教えてくれない」とおっしゃっていました。まさにその通りで、勤務医との人間関係は歯科医院経営における「隠れたブラックボックス」のような領域なのです。今回は、複数ドクター体制における人間関係の本質的な問題と、その解決策を具体的にお伝えします。

目次

勤務医との連携不全が引き起こす問題の本質

勤務医との関係がうまくいかないとき、多くの院長は「診療方針の違い」だけが原因だと考えがちです。しかし実際には、コミュニケーション不足による相互不信が根底にあることがほとんどです。

ある地方都市の歯科医院では、勤務医が独自の判断で治療方針を変えてしまい、患者から「前回と言うことが違う」というクレームが発生しました。院長が本人に事情を聞くと、「相談しようにも院長が忙しそうで話しかけづらかった」という答えが返ってきたそうです。「忙しそうで話しかけづらい」その一言に、多くの院長が心当たりを持つのではないでしょうか。院長本人に悪気はなくとも、診療の合間の一瞬の表情や返事の素っ気なさが、勤務医にとっては「今は話しかけないほうがいい」というサインとして受け取られてしまうことがあるのです。

日本歯科医師会の勤務医に関する意識調査でも、勤務医が転職を考える理由の上位には「院長とのコミュニケーション不足」「治療方針への発言権のなさ」が繰り返し挙げられています。これは特定の医院だけの問題ではなく、構造的に起こりやすい課題なのです。

さらに厄介なのは、勤務医との関係のこじれが「見えにくい」形でスタッフ全体に波及することです。院長と勤務医のやり取りがぎこちないと、受付や歯科衛生士は敏感にその空気を察知します。「先生同士、あまり仲が良くないのかな」という印象は、患者への対応や院内の連携にも微妙な影を落とします。結果として、離職率の上昇やチームワークの低下という形で、経営数値にまで影響が及ぶこともあるのです。

継承2〜3年目の院長は、前院長の代から在籍している勤務医との関係にも独特の難しさを抱えています。年齢が自分より上の勤務医に対して指導的な立場を取りづらく、かといって対等な関係として放置すれば診療方針の一貫性が保てない。この「立場のねじれ」こそが、勤務医との人間関係を語る上で避けて通れないテーマです。

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勤務医との関係がこじれる3つの原因

原因1|「雇用関係」が対話を遠ざけている

院長と勤務医は雇用主と被雇用者という関係にあるため、勤務医側から本音を切り出しにくい構造があります。院長が「何かあれば言ってきてほしい」と思っていても、勤務医からすれば「評価に響くかもしれない」という遠慮が働きます。特に賞与や勤務条件の見直し時期が近いタイミングでは、勤務医はますます本音を隠すようになり、院長には表面上の「問題なし」しか伝わらなくなってしまいます。

この構造は、院長がどれだけオープンな性格であっても簡単には解消されません。むしろ「気さくに話しかけているつもり」の院長ほど、勤務医側の遠慮に気づかず「うちは風通しがいい」と思い込んでしまう危険があります。

原因2|治療方針のすり合わせの場がない

多くの医院では、日々の診療に追われて勤務医と治療方針をじっくりすり合わせる時間が確保されていません。結果として、勤務医は自己判断で対応せざるを得なくなり、それが院長の目には「勝手な判断」に映ってしまいます。

治療方針のすり合わせが不足すると、患者への説明内容にもズレが生じます。同じ医院なのに担当医によって説明が異なると、患者は不安を覚え、それがクレームや転院につながることもあります。院長からすれば「なぜ相談してくれなかったのか」という気持ちになりますが、勤務医からすれば「相談する時間もタイミングもなかった」というのが実情であるケースがほとんどです。

原因3|スタッフを介した間接的なすれ違い

院長と勤務医が直接話さず、歯科衛生士や歯科助手を介して情報が伝わることで、伝言ゲームのように内容が変質してしまうケースも少なくありません。スタッフを「橋渡し役」にしてしまった時点で、関係修復は遠のいていきます。このようなすれ違いが積み重なると、院内ミーティングでも本音の意見が出にくい空気が生まれます。実際、歯科医院ミーティングで意見が出ない原因と改善5選でも触れているように、発言しづらい空気は勤務医とスタッフの双方に伝染します。

勤務医との信頼関係を築く解決方法

定期的な1対1の対話の場を設ける

週に1回、15分でよいので勤務医と2人だけで話す時間を作りましょう。診療の相談だけでなく、「最近困っていることはないか」を聞くだけでも、勤務医の受け止め方は大きく変わります。

この対話の場を「評価面談」ではなく「相談の場」として位置づけることがポイントです。評価につながる話だと身構えられると本音は出てきません。最初の数回は雑談だけで終わっても構わないという心構えで臨むと、勤務医側の緊張もほどけていきます。継続することで、次第に治療方針や患者対応についての具体的な相談が自然と出てくるようになります。

治療方針の「判断基準」を言語化して共有する

すべてのケースを事前に取り決めることは不可能ですが、「迷ったときはこの基準で判断する」という共通の物差しを持つことで、勤務医が自信を持って判断できるようになります。これは院長自身が意思決定の背景を言葉にして伝える訓練でもあります。自分の判断基準を言語化できる院長は、勤務医からもスタッフからも信頼されます。

たとえば「保存治療と抜歯の判断に迷ったら、まず患者の生活背景を確認する」といった具体的な基準を共有しておくだけで、勤務医の判断のブレは大きく減ります。判断基準は一度で完璧なものを作る必要はなく、実際のケースが起きるたびに「今回はなぜその判断にしたのか」を話し合いながら、少しずつ言語化を積み重ねていくのが現実的です。

勤務医の得意分野を把握し、任せる領域を明確にする

院長がすべての治療方針を細かく指示しようとすると、勤務医は「信頼されていない」と感じやすくなります。逆に、勤務医の得意分野や興味のある治療領域を把握し、そこについては裁量を持たせることで、勤務医は自分の専門性を発揮しやすくなります。任せる領域とすり合わせが必要な領域を分けて考えることが、無用な摩擦を減らす近道です。

たとえば、ある医院では小児歯科に強い関心を持つ勤務医に対して、小児患者の治療方針については大枠の判断を一任し、院長は最終確認のみを行う体制に変えたところ、勤務医のモチベーションが目に見えて向上したという事例があります。「任せる」という一言が、勤務医の当事者意識を大きく変えることがあります。

心理的安全性を医師間にも広げる

心理的安全性というと院長とスタッフの関係で語られがちですが、実は勤務医との関係にこそ強く必要とされる概念です。「意見を言っても否定されない」という安心感があってはじめて、勤務医は治療方針について率直に意見を出せるようになります。組織全体での作り方は歯科医院の心理的安全性の作り方|院長の実践5ステップで詳しく解説していますので、勤務医との関係にも応用してみてください。

今日からできる具体的なアクション

まずは今週、勤務医と2人だけで15分話す時間を予約カレンダーに入れてみましょう。話す内容は業務連絡ではなく、「最近どう?」という一言で構いません。この小さな一歩が、数ヶ月後の信頼関係の差を生みます。

また、古参のスタッフが勤務医への接し方に影響を与えているケースもあります。歯科医院の古参スタッフの扱い方|2代目院長の心得も参考にしながら、院内全体の人間関係を俯瞰して見直してみてください。

さらに、勤務医との関係を継続的に良好に保つためには、単発の対話だけでなく「振り返りのリズム」を作ることも効果的です。月に一度でよいので、「この1ヶ月でうまくいったこと」「改善したいこと」を勤務医と一緒に振り返る時間を設けてみましょう。振り返りを習慣化することで、問題が小さいうちに気づき合える関係性が育っていきます。

まとめ|一人で抱え込まず、対話から始めましょう

勤務医との連携不全は、決して「相性が悪い」の一言で片付けられる問題ではありません。雇用関係という構造上の遠慮、対話の場の不足、間接的な情報伝達というすれ違いの積み重ねが原因です。関係を変える一歩は、いつも院長側からの小さな声かけから始まります。

勤務医との関係は、院長一人の努力だけで完結するものではなく、スタッフを含めた院内全体の空気づくりとも深くつながっています。だからこそ、「うまくいかないのは自分のせいだ」と抱え込みすぎず、少しずつ仕組みとして対話の場を整えていくという視点を持っていただきたいと思います。

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よくある質問

Q1. 勤務医との1対1面談で何を話せばいいですか?

業務連絡だけでなく、「診療で困っていること」「今後のキャリアについて考えていること」を聞くことをおすすめします。最初は雑談から入り、徐々に本音を話せる関係を作っていきましょう。

Q2. 勤務医が治療方針について意見してこないのですが、どうすればいいですか?

意見を言わないのは「言っても仕方ない」と感じている可能性があります。まずは院長側から「あなたの意見を聞きたい」という姿勢を明確に伝え、実際に出た意見を採用する経験を重ねることが大切です。

Q3. 複数の勤務医がいる場合、個別対応と全体ミーティングどちらを重視すべきですか?

両方が必要ですが、優先すべきは個別対応です。全体ミーティングでは言いにくいことも、1対1であれば話しやすくなります。個別の信頼関係があってはじめて、全体の場でも建設的な議論ができるようになります。

Q4. 勤務医とスタッフの間で板挟みになった場合はどうすればいいですか?

まずは事実確認を双方から個別に行い、感情的な対立と業務上の問題を切り分けましょう。院長が仲裁役として公平な立場を保つことが、双方からの信頼維持につながります。

Q5. 勤務医との関係改善に外部のサポートを使うメリットはありますか?

院長自身が当事者であるため、感情的になりやすく客観視が難しい場面があります。第三者を交えることで、双方が本音を話しやすくなり、関係改善のスピードが上がるケースが多くあります。また、コーチングの専門家が間に入ることで、院長自身も自分の関わり方の癖に気づき、勤務医だけでなくスタッフ全体との関係改善にもつながっていくことが期待できます。

Q6. 勤務医との関係づくりに、どのくらいの期間を見込めばよいですか?

関係性の深さにもよりますが、週1回の対話を続けた場合、3ヶ月ほどで勤務医側の態度に変化が見え始めることが多いです。すぐに結果を求めず、まずは小さな対話を継続することを目標にしてみてください。

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この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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