「今回もまた『特にありません』で終わってしまった」――スタッフ面談を終えたあと、そんな徒労感を抱えていませんか。院長を継いでまだ2〜3年、前院長の代からいるベテラン歯科衛生士との距離感に悩み、本当は何を考えているのか分からないまま日々の診療を回している。そんな2代目・3代目院長は決して少なくありません。
本記事では、歯科衛生士との面談で本音を引き出すための考え方と具体的な手順を、コーチングと医院マネジメントの現場経験をもとに解説します。この記事を読むと、次のことが分かります。
- 歯科衛生士が面談で本音を話してくれない本当の理由
- 今日の面談から使える質問の型と会話の進め方
- 院長一人で抱え込まずに本音を引き出す仕組みの作り方
歯科衛生士の面談で本音を引き出す方法とは、心理的安全性を確保した場で、評価者ではなく伴走者として関わりながら、質問の順序とタイミングを工夫し、本人が安心して本心を話せる状態をつくる手法のことです。単なる「聞き方のテクニック」ではなく、面談前の準備から面談後のフォローまでを含めた一連のプロセスとして捉えることが、本音を引き出す最大のコツになります。
なぜ歯科衛生士は面談で「当たり障りのない返事」しかしないのか
歯科衛生士が面談で本音を話さないのはなぜかというと、多くの場合「話しても状況が変わらない」「評価に響くかもしれない」という不安が先に立つからです。特に事業承継直後の医院では、この傾向が顕著に表れます。
承継直後の院長に共通する「面談あるある」
先代から医院を引き継いだばかりの院長が最初にぶつかる壁が、まさにこの「面談で本音が出てこない」問題です。年に一度の評価面談で「最近どうですか」と聞いても、返ってくるのは「特にありません」「大丈夫です」という表面的な言葉ばかり。ところが数ヶ月後、突然の退職届が出されて初めて、実は半年前から不満を抱えていたことを知る――このパターンは、承継2〜3年目の院長からの相談で驚くほど多く聞かれます。日本歯科衛生士会が行った就業実態に関する調査でも、離職を考えた理由の上位には「人間関係」「評価やコミュニケーション不足への不満」が挙がっており、これは特定の医院に限った話ではなく、業界全体に共通する構造的な課題であることが分かります。
「大丈夫です」の裏にある本当の気持ち
ベテラン歯科衛生士ほど、この「大丈夫です」を言い慣れています。それは嘘をついているわけではなく、これまでの経験から「本音を言っても医院は変わらない」「余計なことを言って浮きたくない」という学習をしてしまっているからです。本音が出てこないのは、スタッフの人間性の問題ではなく、面談という「場」に本音を話すだけの安全性がまだ存在していないというサインです。
私自身、コーチングの仕事を始める前は人間関係の機微を読むのが苦手で、相手の「大丈夫です」を文字通り受け取ってしまい、後になって深刻な不満を抱えていたことに気づけなかった経験があります。その経験があるからこそ、院長先生方が「気づけなかった自分」を責める気持ちがよく分かります。実際に私たちが面談代行として現場に入ると、院長には見せなかった涙や本音を語り出すスタッフが少なくありません。ある調査では、職場での心理的安全性が高いチームほど生産性や定着率が高いという結果が示されており(Googleの「プロジェクト・アリストテレス」など)、面談における安心感の設計は決して精神論ではなく、組織づくりの土台となる要素なのです。
本音を引き出せない3つの根本原因
面談で本音が引き出せない背景には、テクニック不足だけでは説明できない、もっと構造的な原因が存在します。ここでは臨床現場でよく見られる3つの根本原因を整理します。
原因1:評価者である院長には本音を言いにくいという心理構造
院長は給与や評価、シフト配置などを決める立場にあります。スタッフからすれば、面談相手は「自分の待遇を左右する人物」であり、そこに率直な不満をぶつけるのはリスクを伴う行為です。これは院長個人の人柄とは関係なく、立場そのものが持つ構造的な壁です。
原因2:「前院長との比較」への無意識のプレッシャー
先代の院長を長く見てきたベテランスタッフほど、無意識のうちに新院長を先代と比較しています。院長自身もそれを感じ取っているため、面談の場で「先代のようにできているだろうか」というプレッシャーを抱え、踏み込んだ質問をためらってしまう。この相互の遠慮が、本音の交換を妨げる大きな要因になっています。
原因3:面談の「聞き方」が詰問になっている
多くの面談は、意図せず「詰問調」になりがちです。「何か問題はありますか」という質問は、答える側からすると「問題を報告させられる場」に感じられ、防御的な返答を引き出してしまいます。質問の設計そのものが、本音を閉ざす方向に働いているケースは珍しくありません。
| NGな質問の例 | 本音を引き出しやすい質問の例 |
|---|---|
| 「何か不満はありますか」 | 「最近、仕事をしていて一番エネルギーを使うのはどんな場面ですか」 |
| 「ちゃんとできていますか」 | 「今のやり方で、やりにくいと感じている手順はありますか」 |
| 「特に問題ないですよね」 | 「もし何でも変えられるとしたら、まず何を変えたいですか」 |
「詰問」から「対話」へ質問の型を変えるだけで、返ってくる言葉の深さは大きく変わります。これは特別な話術ではなく、質問の設計を少し工夫するだけで実践できることです。
本音を引き出す面談の準備 ―― 場づくりと質問設計
本音を引き出す面談は、面談当日の会話だけで決まるものではありません。むしろ8割は「準備」で決まると言っても過言ではありません。ここでは面談前にやっておくべき具体的な準備を解説します。
面談前にやるべき3つの準備
まず一つ目は、面談の目的を「評価」ではなく「対話」として本人に事前に伝えておくことです。二つ目は、直近3ヶ月ほどの本人の言動や業務上の変化を院長自身がメモしておき、具体的なエピソードをもとに質問できるようにしておくこと。三つ目は、面談時間を最低30分は確保し、途中で診療の呼び出しが入らないよう体制を整えておくことです。この準備を怠ると、どれだけ質問が上手でも本音は引き出せません。
質問は「オープンクエスチョン」から始める
面談の冒頭でいきなり核心を突く質問をすると、相手は身構えてしまいます。「最近調子はどうですか」といった漠然とした質問ではなく、「今日は最近の働き方について、率直な話を聞かせてもらえたら嬉しいです」というように、対話の目的をやわらかく共有しながら始めるのがコツです。答えの幅を狭めない「オープンクエスチョン」を使うことで、相手は自分のペースで話し始めることができます。
面談の場所・タイミングの選び方
診療室の隅や、休憩室の慌ただしい雰囲気の中で行う面談では、どうしても本音は出てきません。可能であれば診療時間外に、院内の落ち着いた個室、あるいは近隣のカフェなど「評価される場所」から少し離れた場所を選ぶことをおすすめします。本音は「話す内容」だけでなく、「話す場所」によっても大きく左右されます。タイミングについても、繁忙期の直後や体調不良明けは避け、本人の負荷が落ち着いているタイミングを選ぶことが重要です。
面談本番で使える質問テクニックと会話例
準備が整ったら、いよいよ面談本番です。ここでは実際の会話をイメージしながら使える質問の型と、避けるべきNGワードを具体的に紹介します。
アイスブレイクから始める最初の5分
面談の最初の5分間で場の空気が決まります。いきなり本題に入るのではなく、「最近の休みはどう過ごしましたか」といった軽い雑談から入り、相手の表情や声のトーンを観察しながら少しずつ距離を縮めていきます。この5分を省略してしまうと、その後どれだけ良い質問をしても、相手の心は開きません。
核心に迫る「深掘り質問」の型
ある程度場が温まったら、「もし何でも自由に変えられるとしたら、この医院で最初に変えたいことは何ですか」「今の働き方で、これだけは続けたいと思うことは何ですか」といった、相手の価値観に触れる質問を投げかけます。実際にPlumChanが面談代行に入ったある医院では、この質問をきっかけに、ベテラン衛生士が「新しい機材の使い方を若手に教える役割を任されたいのに、いつまでも補助業務ばかりで評価されていないと感じている」という、院長がまったく想像していなかった本音を語り始めた事例がありました。表面的な「人間関係の不満」の奥に、実は「役割への渇望」が隠れていたのです。
実際の会話の流れをイメージしてみましょう。院長が「最近、業務のなかで気になっていることはありますか」と尋ねると、最初は「特にないです、大丈夫です」という返答が返ってきます。ここで面談を終えてしまうのが、多くの院長がやってしまう失敗です。そこで一呼吸置き、「そう言ってもらえて安心しました。ちなみに、もし時間や人手の制約がまったくなかったら、この医院でやってみたいことはありますか」と角度を変えて再度尋ねます。すると「実は後輩の指導にもっと関わりたいけれど、自分から言い出しにくかった」というように、最初の質問では出てこなかった本音がようやく顔を出します。一度目の「大丈夫です」で会話を終わらせず、質問の角度を変えてもう一段深く踏み込む勇気が、本音を引き出す分かれ道になります。
沈黙を恐れない ―― 待つ技術
質問を投げかけた後、相手がすぐに答えられずに沈黙が生まれることがあります。多くの院長はこの沈黙に耐えられず、つい別の質問を重ねたり、自分から話し始めたりしてしまいます。しかし本音を言葉にするには時間が必要です。沈黙は失敗ではなく、相手が本音を探している証拠です。10秒、20秒と、こちらが焦らず待つ姿勢こそが、深い本音を引き出す鍵になります。
NGワード集 ―― 言ってはいけない一言
「前の院長のときはこうだった」という比較の言葉、「それは甘えじゃないか」という否定的な評価、「みんな頑張っているんだから」という一般化の言葉は、いずれも本音を一瞬で閉ざしてしまうNGワードです。相手が勇気を出して話した内容に対して、まず「話してくれてありがとうございます」と受け止める姿勢を示すことが、次の本音につながる最初の一歩になります。
面談後にやるべきフォローアップと組織への還元
面談で本音を引き出せたとしても、それを聞きっぱなしにしてしまえば「言っても変わらない」という失望感を生み、次回以降はさらに本音を話してもらえなくなります。面談後のフォローこそが、継続的な信頼関係を築く分かれ道です。
「言った意味があった」と思わせるフィードバックの返し方
面談で出た要望や不満のすべてをすぐに実現するのは難しくても、「検討した結果」を必ず本人に伝えることが重要です。例えば「この前話してくれた新人指導の件、来月からシフトに組み込めるよう調整しています」といった一言があるだけで、スタッフは「自分の声が届いている」という実感を持てます。厚生労働省の調査でも、職場での意見が反映される実感が高い従業員ほど、定着意欲が高い傾向が示されており、フィードバックの有無は離職率にも直結する要素です。仮に要望をそのまま実現できない場合でも、「今回は難しいけれど、こういう理由で難しく、代わりにこんな形は検討できそうです」と、検討したプロセスごと伝えることが大切です。何も返ってこないことが最も信頼を失う対応であり、結論がどうであれ「向き合ってもらえた」という実感を残すことが次の本音につながります。
個人の声を組織改善につなげる仕組み化
一人の面談で得た声を院長だけの記憶にとどめず、簡単な記録として残し、次回の面談や医院運営の会議で振り返る仕組みを作ることをおすすめします。誰がいつ何を話したかを蓄積していくことで、スタッフ個人の変化だけでなく、医院全体の傾向――例えば「新人教育の負担が特定のスタッフに偏っている」といった構造的な課題――も見えてくるようになります。記録の方法は特別なシステムを導入する必要はなく、面談日・話した内容の要点・次回までに院長が対応すること、の3項目だけをノートやスプレッドシートにまとめておくだけでも十分です。大切なのは形式ではなく、「聞いた声を忘れずに扱い続ける」という姿勢そのものであり、この積み重ねが医院全体の風通しを少しずつ変えていきます。
次回面談までの継続的な信頼構築
本音を引き出す面談は、一度の対話で完結するものではありません。日々の何気ない声かけや、面談で聞いた内容を踏まえた小さな気遣いの積み重ねが、次回の面談での本音の深さを決めます。信頼関係は面談の30分だけでなく、その前後364日の関わり方によって育まれるものです。
院長自身が面談することの限界と第三者面談代行という選択肢
ここまで、院長自身が面談で本音を引き出すための具体的な方法を解説してきました。しかし現実には、院長がどれだけ質問の型を学んでも、構造的に超えられない壁が存在します。
なぜ院長本人の面談には限界があるのか
院長は給与や評価、雇用継続の決定権を持つ「利害関係者」です。どれだけ信頼関係を築いても、スタッフの側には「この場での発言が自分の評価や立場に影響するかもしれない」という無意識の警戒心が残り続けます。これは院長の努力不足ではなく、立場そのものに起因する構造的な限界であり、テクニックだけでは完全には解消できない部分です。
第三者(コーチ)が入ることで変わること
ここで有効なのが、利害関係のない第三者が面談を担う「面談代行」という選択肢です。医院の経営とは直接関係のないコーチが間に入ることで、スタッフは評価を気にせず本音を話しやすくなります。実際にPlumChanの面談代行サービスを利用した医院では、院長との面談では一度も出なかった「本当は器具出しの手順に不安があるが、聞くと迷惑がられそうで言えなかった」という声が、第三者との面談で初めて明らかになったケースがあります。院長はその声を受けて手順書を見直し、結果として若手スタッフ全体の不安解消につながりました。
PlumChanのスタッフ面談代行サービスの流れ
PlumChanでは、医科・歯科医院に特化したコーチングの知見をもとに、専門のコーチがスタッフ一人ひとりと個別面談を行い、本音を丁寧に引き出したうえで、個人が特定されない形で医院運営に活かせる形にまとめて院長にフィードバックします。具体的には、まず院長との事前ヒアリングで医院の現状や気になっているスタッフの様子を共有したうえで、1人あたり30分から45分程度の個別面談をスタッフ全員に対して実施します。面談後は個々の発言をそのまま伝えるのではなく、医院運営に活かせる形に整理したレポートとして院長にフィードバックし、必要に応じて改善アクションの相談にも継続的に応じます。院長自身が面談を行う場合と、第三者が代行する場合の違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 院長自身が面談する場合 | 第三者(コーチ)が面談代行する場合 |
|---|---|---|
| 心理的な安心感 | 評価者という立場上、警戒されやすい | 利害関係がなく本音を話しやすい |
| 院長の負担 | 診療の合間に時間を確保する必要がある | 面談自体は任せられ、結果の共有のみで済む |
| 得られる情報の深さ | 表面的な回答にとどまりやすい | 専門的な傾聴技術で深い本音まで引き出せる |
| 継続性 | 院長の多忙により面談が後回しになりがち | 定期的な面談を仕組みとして継続しやすい |
本音を引き出す面談は、院長一人で完璧にこなそうとしなくてもよいのです。むしろ「自分では聞き出せない部分がある」と認め、第三者の力を借りるという選択も、承継2〜3年目の院長にとって現実的で有効な打ち手のひとつです。
ここまでご紹介してきた質問の型や準備の工夫は、今日の面談から取り入れられる実践的な内容です。まずはご自身で一つでも試していただき、それでも「本音が出てこない」という壁を感じたときは、無理をせず専門家の力を借りることをご検討ください。前院長と比較され、スタッフとの距離感に悩む2代目・3代目院長は、あなただけではありません。まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。
よくある質問
Q1. 歯科衛生士との面談はどれくらいの頻度で行うべきですか?
A. 最低でも半年に1回、理想を言えば3ヶ月に1回程度の実施が望ましいとされています。
Q2. 面談で本音を引き出すために避けるべき質問は何ですか?
A. 「はい・いいえ」で終わる詰問調の質問は、本音を閉ざしてしまうため避けましょう。
Q3. 院長が同席すると本音が出ないのはなぜですか?
A. 評価や待遇を決める立場である院長には、不満や本音を言いにくい心理が働くためです。
Q4. 面談代行サービスとは何ですか?
A. 利害関係のない第三者が中立的な立場でスタッフと面談し、本音を引き出す外部サービスです。
Q5. ベテランスタッフとの面談で気をつけることは何ですか?
A. 前院長との比較を避け、これまでの経験や貢献に敬意を示す姿勢を持つことが重要です。

