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スタッフ1人の離職で失う費用の内訳

スタッフ1人の離職で失う費用の内訳
目次

「また求人広告費か……」その数字、氷山の一角です

求人サイトの契約更新ボタンを押しながら、ため息をついたことはありませんか。歯科衛生士1人を採用するために、また十数万円から数十万円が飛んでいく。多くの院長先生は、この「求人広告費」を離職のコストだと思っています。

でも、それは氷山の一角にすぎません。本当に医院の体力を削っているのは、請求書に載らない部分です。

私自身、経営者として組織に関わる中で、「辞められて初めて、どれだけそのスタッフに助けられていたかに気づく」という場面を何度も見てきました。数字にしてみると、その痛みがどれほど経営に直結しているかが、はっきり見えてきます。この記事では、スタッフ1人の離職で実際にいくら失っているのかを内訳に分解し、その損失を繰り返さないために院長先生が本当にやるべきことをお伝えします。

歯科衛生士1人の離職とは、そもそも「採用費・教育費・機会損失を合わせた、数十万円から百数十万円規模の経営損失」を指します。この定義を頭に入れた上で、以降の内訳を見ていきましょう。

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スタッフ1人の離職で本当はいくら失っているのか

離職のコストは、大きく「外部コスト」「内部コスト」「機会損失」の3つに分かれます。求人広告費だけを見ていると、この全体像を見誤ります。

「辞めた分、また採用すればいい」という発想こそが、損失を膨らませている最大の原因です。

歯科衛生士の採用単価は、利用するサービスによって幅がありますが、おおむね30万円〜100万円程度が相場とされています。人材紹介サービス経由では年収の20〜25%程度が手数料の目安となり、年収400万円のスタッフなら100万円前後になるケースもあります。求人広告媒体経由であれば10万円台〜40万円台と比較的抑えられますが、それでも1回で終わらないのが採用活動の実情です。

さらに見落とされがちなのが、採用後の教育コストです。新人が独り立ちするまでの研修期間中、先輩スタッフの生産性は落ち、院長先生自身が指導に時間を割くことになります。この「見えない人件費」を含めると、教育費だけで50万円〜60万円程度に達するとされる試算もあります。

費目目安金額内容
採用コスト(外部)30万円〜100万円求人広告・人材紹介手数料など
教育コスト(内部)約60万円研修期間の生産性低下・院長/先輩の指導時間
機会損失算出しづらいが最大患者対応の質低下・既存スタッフの疲弊・離職連鎖

この表からもわかる通り、「求人広告費だけ見て安心する」のは、氷山の水面上だけを数えているのと同じです。参考までに、医療・福祉業界全体の中途採用単価は平均53.2万円というデータもあり(マイナビ中途採用状況調査)、歯科衛生士の採用がいかにコストのかかる領域かがわかります。

見えにくい「機会損失」こそが一番高くつく

内部コストの中でも、特に経営に効いてくるのが「機会損失」です。これは請求書には出てきませんが、実際の損害額としては採用コストや教育コストを上回ることが少なくありません。

「1人抜けただけ」のはずが、なぜかチーム全体の空気まで悪くなる。この連鎖こそが本当の損失です。

具体的には、次のような形で医院の収益力を静かに削っていきます。

患者対応の質が落ち、キャンセル・離患につながる

慣れたスタッフが抜けると、チェアタイムの回転や説明の質が一時的に落ちます。患者さんは些細な変化に敏感で、「なんとなく前と違う」という違和感が再診率の低下につながることがあります。

残ったスタッフの負担が増え、次の離職を呼ぶ

1人が抜けた穴を、残ったスタッフの残業や兼務で埋める医院は少なくありません。私自身、経営相談の場で「頑張っている人ほど先に潰れる」という現場を何度も目にしてきました。この負荷が積み重なると、次の離職を呼ぶ「離職の連鎖」が起こります。新人がすぐ辞めず定着する医院がやっている教え方については、歯科医院の新人教育|OJTで定着率を上げる方法でも詳しく解説しています。

採用活動そのものに院長の時間が奪われる

求人票の作成、面接調整、内定者フォロー。これらはすべて院長先生の診療時間・経営時間を圧迫します。時給換算すれば、この時間コストだけで数十万円規模になることも珍しくありません。

「辞めます」の一言で、採用活動がまるごと振り出しに戻る

やっと一人前に育ったスタッフが辞めるとき、失うのは今までの投資だけではありません。次の採用が決まるまでの数ヶ月間、求人媒体への出稿を続けながら、既存スタッフのシフトのやりくりにも頭を悩ませることになります。私自身、複数の医院の相談に乗ってきた中で、「採用が決まるまでの数ヶ月が一番苦しかった」という声を数え切れないほど聞いてきました。この「空白期間」そのものが、実は最も見えにくいコストです。

なぜ歯科医院はこの損失を繰り返すのか

離職のたびに同じ額を失い続けている医院には、共通する3つの原因があります。

「良い人を採用すれば解決する」という発想そのものが、実は損失を繰り返す入り口になっています。

原因1|「採用」で穴を塞ごうとしている

離職が出ると、多くの院長先生はまず求人サイトを開きます。しかし、辞めた理由が「職場の人間関係」や「相談できる相手がいなかったこと」であれば、次に採用した人も同じ理由で辞めていく可能性が高いのです。採用は対症療法であり、根本治療にはなりません。

原因2|辞める前のサインを見逃している

多くの離職は、ある日突然起きるわけではありません。私自身、相談を受ける中で「振り返ってみると、あのときの表情の変化が最初のサインだった」という声を何度も聞いてきました。日々の忙しさの中で、そうした小さな変化を拾い上げる仕組みが医院にないことが、突然の離職を招く土壌になります。

原因3|「辞めたコスト」を可視化していない

そもそも、いくら失っているかを数字で把握していなければ、対策に投資判断が下せません。「なんとなく大変だった」で終わらせている医院ほど、翌年も同じ額を同じ理由で失い続ける傾向があります。

損失を減らすために本当にやるべきこと

離職コストを下げる本質的な打ち手は、採用手法の見直しではなく「今いるスタッフが辞めたくならない関わり方」に投資することです。

採用にお金をかける前に、今いるスタッフとの関係にどれだけ時間をかけているか、一度振り返ってみてください。

具体的には、次の3つが土台になります。

  1. 定期的な1対1の対話の場をつくる:忙しさを理由に後回しにしがちな面談を、仕組みとして固定する
  2. 辞める前のサインに気づける関係性を築く:日常会話の中で変化に気づける距離感を保つ
  3. 離職コストを数字で可視化し、投資判断の材料にする:本記事の表を参考に、自院の実際の損失額を一度計算してみる

これらは、退職代行サービスを使われてから慌てて対応するのではなく、その手前で手を打つための取り組みでもあります。突然の離職への初動対応については退職代行を使われた院長へ|歯科医院の初動と再発防止も参考になります。

私自身が伴走してきた医院の中には、面談の仕組みを整えただけで、翌年の離職者数が目に見えて減ったケースもありました。特別な制度やITツールを導入したわけではなく、「決まった頻度で、決まった相手が、話を聞く」という当たり前のことを仕組みにしただけです。特別なことをしなくても、仕組みにするだけで結果は変わります。院長先生お一人で全スタッフの面談を担うのが難しい場合は、外部の専門家に一部を委ねるという選択肢も検討してみてください。

今週からできる具体的なアクション

大きな制度改革は必要ありません。まずは小さく、確実に始められることから着手しましょう。

  • 今週中に、1人でいいので5分だけの立ち話の時間をつくる:「最近どう?」だけでも構いません
  • 新人スタッフの初月だけは、教育担当を明確に固定する:属人的な放置を防ぎます。新人教育でつまずきやすいポイントは若手スタッフの早期離職を防ぐ5つの方法にまとめています
  • 離職があった際は「理由」だけでなく「いつから兆候があったか」も振り返る:次の予防につなげる

小さな対話の積み重ねが、結果として一番大きな採用コストの節約になります。

まとめ|数字を知ることが、最初の一歩です

スタッフ1人の離職で失っているのは、求人広告費だけではありません。教育コスト、そして何より大きな機会損失まで含めれば、その総額は院長先生が思っている以上に大きなものです。

そしてその損失を止める鍵は、より良い採用手法を探すことではなく、今いるスタッフとの関わり方を見直すことにあります。私自身、人間関係に悩んだ経験があるからこそ、「数字の裏にある一人ひとりの気持ち」に向き合うことの大切さを実感しています。

離職のたびに「また求人を出さなきゃ」と反射的に動く前に、一度立ち止まって、今の医院にいくらの損失が積み重なっているかを数字にしてみてください。そこから見えてくる景色は、これまでとは違うはずです。

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よくある質問

Q1. 歯科衛生士1人の採用にかかる費用の相場はどれくらいですか?

利用するサービスによって幅がありますが、おおむね30万円〜100万円程度が目安です。人材紹介サービスは年収の20〜25%程度が手数料相場となるため高額になりやすく、求人広告媒体は比較的抑えられる傾向があります。ただしこれは外部コストのみであり、教育コストや機会損失を含めるとさらに大きな金額になります。

Q2. 離職コストを下げるために、まず何から始めればいいですか?

新しい制度をつくる前に、今いるスタッフとの対話の頻度を見直すことから始めてください。特に、忙しさを理由に後回しにされがちな1対1の対話の時間を、仕組みとして固定することが第一歩になります。難しい仕組みである必要はなく、「毎月同じ時期に、同じ相手が話を聞く」というシンプルなルールだけでも十分に効果があります。

Q3. 教育コストはどのように計算すればいいですか?

新人が独り立ちするまでの期間、先輩スタッフの生産性がどれだけ落ちるか、院長先生自身がどれだけ指導時間を割いているかを時給換算するのが基本的な考え方です。目安として50万円〜60万円程度に達するケースが多いとされています。

Q4. 採用活動を頑張っているのに、なぜまた同じことが起きるのですか?

離職の原因が人間関係や職場環境にある場合、採用手法を変えても根本原因は解決していないためです。新しく採用した方も、同じ環境であれば同じ理由で離職してしまう可能性が高くなります。

Q5. 院長が忙しくてスタッフとの対話の時間が取れません。どうすればいいですか?

まずは1日5分からで構いません。診療の合間の短い立ち話でも、継続すれば十分な効果があります。それでも時間が確保できない場合は、面談そのものを外部に委ねるという選択肢もあります。

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この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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