「本を読んでも、現場では使えなかった」院長が抱えるジレンマ
スタッフとの関係に悩み、書店でコーチングや部下育成の本を手に取ったことがある院長は少なくないはずです。ですが読んだ直後は納得しても、いざ診療室でスタッフと向き合うと、本の内容をどう使えばいいのか分からなくなってしまう。そんな経験はありませんか。
コーチングの本は数えきれないほど出版されていますが、その多くは一般企業の管理職や営業組織を想定して書かれています。歯科医院のように、少人数で、女性スタッフが多く、診療という緊張感のある現場で働くチームにそのまま当てはめようとすると、うまくかみ合わないことがあるのです。
私自身、コーチとして活動を始めた頃、良書と言われる本を片っ端から読み漁りましたが、最初は「知識は増えたのに、現場での声かけは変わらない」というもどかしさを何年も抱えていました。付箋だらけになった本が本棚に何冊も並んでいるのに、実際にスタッフとの関係が良くなった実感がない。そのギャップに悩んでいた時期が、私にも確かにありました。
振り返ってみると、当時の私は「良い本を読めば、自然と行動が変わるはずだ」と思い込んでいました。しかし実際には、本の内容を自分の置かれている状況に合わせて翻訳し、小さく試してみるという一手間がなければ、知識は知識のままで終わってしまいます。今回は、数多くの本の中から、歯科医院の院長という現場で本当に役に立った5冊を、選んだ理由とともにご紹介します。
本選びの前に知っておきたい、コーチング本の3つの系統
書店に並ぶコーチング本は、大きく3つの系統に分かれます。この違いを知らずに選ぶと、「思っていた内容と違った」というミスマッチが起こりやすくなります。特に歯科医院の院長は忙しい診療の合間を縫って本を読むことが多いため、目的に合わない本を選んでしまうと、限られた時間が無駄になってしまいかねません。
系統1:基礎理論を学ぶための入門書
コーチングとは何か、傾聴・質問・承認といった基本スキルを体系的に学ぶための本です。歯科医院におけるコーチングの基本的な考え方を押さえたい方に向いています。
系統2:現場での実践スキルに特化した本
1on1の進め方や、部下への声かけの具体例など、明日から使える型を紹介する本です。
系統3:心理学・組織論の視点から裏付けを得るための本
心理的安全性や動機づけの理論など、コーチングがなぜ効果を持つのかを理解するための本です。
面談でスタッフの本音が引き出せずに悩んでいるなら系統2、そもそも「なぜコーチング的な関わりが必要なのか」を腹落ちさせたいなら系統3というように、自分の悩みの段階に合わせて選ぶことで、読んだ内容が現場での行動に直結しやすくなります。逆に、系統がずれた本を選んでしまうと、内容自体は良書でも「今欲しかった答えではなかった」と感じてしまいがちです。
自分が今どこでつまずいているのかを知ってから本を選ぶことが、遠回りをしない一番の近道です。
院長におすすめのコーチング本5選
ここからは、私が実際に読み、歯科医院のコーチングの現場でも紹介してきた5冊を、選んだ理由とともに紹介します。内容の詳細な引用は避け、要点と活用の仕方を中心にお伝えします。
| 書籍名 | 系統 | こんな院長におすすめ |
|---|---|---|
| 新 コーチングが人を活かす | 実践スキル | 今日から使える具体的な声かけの型を知りたい |
| コーチングで病院が変わった | 医療現場の実例 | 医療現場でのコーチング導入イメージを持ちたい |
| 心理的安全性のつくりかた | 組織論・裏付け | なぜスタッフが本音を話さないのか理論から理解したい |
| 最高のコーチは、教えない。 | 実践スキル | 教えすぎてしまう自分の癖に気づきたい |
| Yahooの1on1 | 実践スキル | 面談・1on1の具体的な進め方を知りたい |
1. 新 コーチングが人を活かす
コーチングの実践スキルを、具体的な場面ごとに図解で紹介している一冊です。理論書というより「明日、この言い方を試してみよう」と思えるヒントが詰まっており、コーチング初心者の院長が最初に読む本として選びました。難しい専門用語が少なく、すきま時間でも読み進めやすい構成になっています。診療の合間の10分でも1項目読み切れる分量なので、忙しい院長が挫折しにくい点も選んだ理由の一つです。
2. コーチングで病院が変わった
医療現場を舞台にコーチングが導入された実例がまとめられた一冊です。一般企業向けの本を読んでいると「うちは診療現場だから当てはまらない」と感じることが多いのですが、この本は医療従事者の働き方そのものを扱っているため、歯科医院の院長にとって一番イメージが湧きやすい内容だと感じ、選びました。診療という緊張感のある現場でも、コーチング的な関わりが機能することを実感できる一冊です。
3. 心理的安全性のつくりかた
Google社の研究をもとに、率直に意見を言い合えるチームをどうつくるかを扱った一冊です。「なぜうちのスタッフは本音を話してくれないのか」という悩みの正体を、理論的に理解したい院長に特におすすめします。感覚ではなく理屈で納得したいタイプの院長にとって、腹落ちしやすい内容です。歯科医院のように上下関係がはっきりしやすい職場だからこそ、この本で扱われている「発言してもばかにされない」という感覚の重要性は、読むほどに実感が深まります。
4. 最高のコーチは、教えない。
一流のスポーツ選手を育ててきたコーチが、なぜ「教えない」指導にたどり着いたのかを綴った一冊です。院長という立場は、どうしても「教えなければ」という責任感が強くなりがちです。私自身も過去に教えすぎて相手のやる気を奪ってしまった経験があり、この本を読んで自分の癖に気づかされました。ティーチングとコーチングの使い分けに悩む院長にぜひ手に取っていただきたい一冊です。専門知識を教える場面と、本人に考えさせる場面を意図的に使い分けるという視点は、臨床経験の長い院長ほど新鮮に感じられるはずです。
5. Yahooの1on1
大手企業が導入した1on1ミーティングの目的や進め方を、良い例・悪い例とあわせて紹介している一冊です。「1対1で話す時間はつくっているが、何を話せばいいのか分からない」という院長に向いています。面談の型を知りたい方は、1on1ミーティング導入方法【7ステップ】もあわせて参考にしていただくと、本の内容がより実践に落とし込みやすくなります。本に出てくる悪い例が、過去の自分の面談とそっくりで苦笑いした、という院長の声も少なくありません。
本を読むだけで終わらせないための3つのコツ
どれほど良い本を読んでも、実践につながらなければ意味がありません。私自身の失敗も踏まえて、本を現場に活かすための3つのコツをお伝えします。
コツ1:1冊につき、実践するのは1つのスキルだけに絞る
本には数多くのスキルが紹介されていますが、一度に全部を試そうとすると、どれも中途半端になってしまいます。まずは「今日は相手の話を最後まで遮らずに聞く」など、一つだけに絞って試してみてください。
コツ2:読んだ内容を、自院のスタッフの顔を思い浮かべながら翻訳する
本の中の事例をそのまま真似るのではなく、「うちのあのスタッフなら、この場面でどう感じるだろう」と置き換えて考えることで、初めて自分の言葉として使えるようになります。
コツ3:一人で抱え込まず、実践した結果を誰かに話す機会をつくる
本で学んだことを試してみても、うまくいったのか失敗だったのか、一人で振り返るのには限界があります。院長という立場は、院内では誰にも弱みを見せにくい孤独なポジションです。私自身も、コーチをつけずに一人で試行錯誤していた時期は、うまくいかない原因が自分の伝え方にあるのか、相手の受け取り方にあるのか、客観的に判断できずに堂々巡りを繰り返していました。実践を客観的に振り返る壁打ち相手を持つことで、学びが定着するスピードは大きく変わります。
本を読んで得た気づきも、誰かに話すことで初めて「自分は何を実践し、何ができていなかったのか」が言語化されます。この振り返りのプロセスを省略してしまうと、同じような失敗を無自覚に繰り返してしまうことになりかねません。
まとめ ― 本は入口、変化を生むのは現場での小さな一歩
本を読むことは、コーチングという世界の入口に立つための、とても価値のある一歩です。ですが本当に医院を変えるのは、本の内容を自分の言葉に置き換えて、目の前のスタッフに一つずつ試していく現場での実践です。
私自身、悩んでいた時期は本を読み漁ることで安心しようとしていた側面もありました。新しい本を読んでいる間だけは「前に進んでいる」ような気がして、実際の行動は何も変わっていないのに満足してしまう。今振り返れば、それは変化を先延ばしにするための、一種の逃げ道だったのかもしれません。
実際に変化が起きたのは、本で得た気づきを誰かに話し、フィードバックをもらいながら少しずつ行動を変えていったときでした。独学で試行錯誤する道を選ぶ院長もいれば、コーチの選び方を参考にプロと一緒に歩む道を選ぶ院長もいます。どちらが正しいということはありませんが、もし独学に限界を感じているなら、まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。
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よくある質問
Q1. コーチングの本はどれから読み始めればいいですか?
まずはコーチングの基本的な考え方が分かる入門書から読み始め、自分が特に困っている場面(面談・指導・教育など)に合わせて実践書を追加していくのがおすすめです。
Q2. 本を読むだけでコーチングは身につきますか?
知識としては身につきますが、実際にスタッフとの会話で使ってみて初めて自分のスキルになります。読んだ内容を1つずつ試し、振り返る習慣を持つことが大切です。
Q3. 忙しくて本を読む時間が取れません。他に方法はありますか?
要約サービスや音声コンテンツを活用する方法もありますが、断片的な情報だけでは実践に落とし込みにくいこともあります。診療の合間や移動時間など、5分・10分の細切れ時間に1項目ずつ読める本を選ぶのも一つの工夫です。それでも時間が取りにくい場合は、体系立てて学べるコーチングを直接受けるという選択肢も検討する価値があります。
Q4. スタッフにもコーチング本を読んでもらうべきですか?
院長がまず実践し、変化を見せることが先です。スタッフに本を渡すだけでは「読んでおいて」という指示になってしまい、かえって負担に感じさせてしまうこともあります。院長自身の関わり方が変わることで初めてスタッフの反応も変わっていくため、まずは自分自身の行動から変えていくことをおすすめします。
Q5. コーチング本の内容が自院の状況と合わないと感じたときはどうすればいいですか?
一般企業向けに書かれた本の事例を、そのまま歯科医院に当てはめようとすると無理が出ることがあります。本の要点だけを抽出し、自院のスタッフの顔を思い浮かべながら、自分なりの言葉に置き換えて試してみることをおすすめします。それでも「うちの状況にはどうしても当てはまらない」と感じる場合は、歯科医院という現場を理解した専門家に直接相談してみるのも一つの方法です。
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