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医院承継後にベテランが辞める3つの理由

医院承継後にベテランが辞める3つの理由

医院を継いだばかりの頃、私のもとには「一番信頼していたベテランスタッフが辞めたがっている」というご相談が驚くほど多く届きます。何年も前院長を支えてきた歯科衛生士や受付リーダーが、代替わりからわずか数ヶ月で退職届を出す。これは決して珍しいことではなく、事業承継後のベテラン離職とは、新旧院長のあいだで積み重ねてきた信頼の前提が崩れ、長年勤めたスタッフが自分の居場所を見失って医院を去ってしまう現象のことです。

私自身、組織の中で人間関係の摩擦にどう向き合えばいいか分からず、信頼していたはずの相手との距離が音もなく開いていく経験を何度もしてきました。だからこそ断言できるのですが、ベテランが辞めるのは「新院長への不満」だけが理由ではありません。多くの場合、もっと根の深い、承継という特殊な状況だからこそ起きる3つの理由が隠れています。この記事では、その3つの理由と、辞意が固まる前に院長にできることを具体的にお伝えします。

目次

事業承継後にベテランスタッフが辞めていく本当の理由

事業承継後にベテランスタッフが辞めていく本当の理由は、待遇や業務量そのものよりも「これまで積み上げてきた自分の役割や関係性が、新体制の中でも継続されるかどうかへの不安」にあります。前院長のもとで長年働いてきたスタッフほど、診療のやり方や患者さんとの関わり方、院内での立ち位置に強い自負を持っています。承継はその土台がいったんリセットされるように感じられる出来事であり、「自分はここにいていいのか」という漠然とした不安こそが、離職の引き金になっているのです。

私がこれまで歯科医院の院長先生方から伺ってきた相談の中でも、退職の直接的なきっかけは些細な一言だったケースがほとんどでした。しかしその一言が引き金になるまでには、数ヶ月から1年近くにわたる小さな違和感の蓄積があります。中小企業庁が公表している事業承継に関する資料でも、経営の承継は資産や技術の引き継ぎにとどまらず、組織運営そのものの引き継ぎが大きな課題であると繰り返し指摘されています。歯科医院のように従業員数が数名から十数名という少人数組織では、経営者の交代が起こす揺らぎが、スタッフ一人ひとりに直接的かつ即座に及ぶという特徴があります。

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ベテランスタッフが辞める3つの理由

理由1|前院長との「暗黙の了解」が通じなくなる

長年同じ院長のもとで働いてきたスタッフは、言葉にしなくても伝わる「暗黙の了解」の中で仕事をしてきました。器具の並べ方、患者さんへの声かけの間合い、多少の遅刻や私語への許容範囲。これらは前院長との間で長い時間をかけて築かれた、いわばその医院だけのローカルルールです。新院長がそれを知らずに「本来のマニュアル通り」に運用しようとすると、ベテランスタッフからすれば自分の仕事のやり方をまるごと否定されたように感じられます。例えば「前は昼休憩中の私語も大目に見てもらえたのに、急に注意された」という些細な出来事一つが、長年の信頼を根こそぎ崩すきっかけになることも珍しくありません。悪気のない「正しさ」の押し付けが、一番の功労者を追い詰めるのです。

理由2|自分の存在価値を否定されたと感じる

承継直後の院長は、経営改善のために新しい取り組みを次々と始めたくなるものです。しかしその過程で「これまでのやり方は古い」というニュアンスが漏れてしまうと、ベテランスタッフは自分自身のキャリアや貢献そのものを否定されたと受け取ります。実際、私が伺った相談の中には、院長は業務フローの効率化の話をしていたつもりが、スタッフには「あなたが長年やってきたことには意味がなかった」と聞こえていた、というすれ違いが何度もありました。「今までのやり方を変えます」という言葉と、「今までの土台があったから今があります、その上でこう変えたい」という言葉とでは、同じ変更内容を伝えていても受け取られ方がまったく異なります。変化を伝える言葉選び一つで、相手の防御反応が大きく変わるのです。

理由3|相談も説明もなく物事が決まっていく

3つ目の理由は、意思決定のプロセスから外されたと感じることです。前院長の時代は診療の合間の雑談の延長で方針が共有されていたのに、代替わり後は税理士や経営コンサルタントとの打ち合わせで物事が決まり、スタッフには結果だけが後から伝えられる。「聞いていない」が積み重なった先にあるのは、静かな不信感です。歯科医院のような少人数の職場では、情報の非対称は驚くほど早くスタッフ間に伝わり、離職の連鎖を招きます。古参スタッフとの向き合い方については歯科医院の古参スタッフの扱い方|2代目院長の心得でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

辞める前に必ず現れる5つの予兆

ベテランスタッフの離職は、ある日突然決まるわけではありません。私がこれまで見聞きしてきた事例では、退職の申し出の前に共通したサインが現れていました。ミーティングでの発言が急に減る、院長への報告が業務連絡のみで雑談が消える、後輩スタッフへの指導に熱が入らなくなる、有給休暇の消化ペースが上がる、そして「そういえば最近○○さん元気ないね」と他のスタッフから声が上がる、という5つです。これらは一つひとつは些細で見過ごされがちですが、複数が同時に出てきた時は要注意のサインだと捉えてください。違和感を「気のせい」で片付けた数ヶ月後に、退職届が届くというのが、実際に起きているパターンです。

なぜ「引き止め」が効かないのか

ベテランスタッフが実際に「辞めたい」と口にした時点では、多くの場合すでに気持ちは固まっています。前述の3つの理由が積み重なる期間は数ヶ月から1年に及ぶことも珍しくなく、退職の申し出はその結果として出てくる最終サインに過ぎません。院長が慌てて給与を上げたり、役職をつけたりといった条件面での引き止めを試みても、根本にある「認められていない」という感情には届かないため効果は限定的です。近年は退職代行サービスを介した突然の申し出も増えており、退職代行を使われた院長へ|歯科医院の初動と再発防止で解説した通り、対話の機会そのものを失ってから初めて事の重大さに気づくケースも少なくありません。

ベテラン離職を防ぐためにできる3つのこと

離職の芽は、承継の初期段階でこそ摘み取ることができます。まず取り組んでいただきたいのは、業務や方針を変える前に「なぜ変えるのか」を全体周知の前に必ず個別に説明する習慣です。全体ミーティングでの一斉告知だけでなく、影響が大きいベテランスタッフには先に一言伝えるだけで、扱われ方への納得感が大きく変わります。次に、これまでのやり方を否定せず「引き継いだ土台の上に積み上げる」という言葉を意識的に選ぶこと。そして最後に、意思決定の過程を可能な限りオープンにし、経営判断の背景の一部でもスタッフに共有する場を定期的に設けることです。変えることそのものより、変える理由を語らないことが人を離れさせるのだと、私は数多くの相談の中で実感してきました。信頼される二代目院長には共通した条件があり、医院承継後、スタッフに信頼される二代目院長の条件でも具体的に紹介しています。

それでも辞めてしまった時の初動対応

万全を尽くしても、ベテランスタッフの退職を完全にゼロにすることはできません。大切なのは、退職の申し出があった後の初動です。感情的に引き止めようとするのではなく、まずは「今までありがとうございました」と率直に感謝を伝え、退職理由を評価や叱責のためではなく今後の組織改善のために聞かせてほしい、という姿勢で話を聞くことです。ここで防御的になってしまうと、退職するスタッフが院内に残るスタッフへ不満を語る形で影響が波及しかねません。私が同席した引き継ぎ面談の中でも、最後にきちんと感謝と労いの言葉を伝えられた医院では、退職後もそのスタッフが元同僚として良好な関係を保ち、時には新人の紹介者になってくれたケースさえありました。引き継ぎ期間中の関わり方一つで、辞めた後に医院がどう語られるかも変わってきます。去っていく人への向き合い方が、残るスタッフの信頼を左右するという視点を、ぜひ持っておいてください。

ベテラン離職が経営に与える影響を数字で見る

ベテランスタッフの離職を「一人減っただけ」と軽く見てしまう院長は少なくありませんが、実際の影響はスタッフ1人分にとどまりません。歯科衛生士や受付リーダーが抜けると、その人が担っていた新人指導・患者対応のノウハウ・院内の暗黙のルール調整といった役割ごと医院から失われます。求人広告費や採用にかかる時間的コスト、新人が独り立ちするまでの教育期間を考えると、ベテラン1人の離職が生む損失は新人スタッフ数人分に相当することも珍しくありません。さらに、ベテランの退職は残るスタッフに「次は自分かもしれない」という不安を波及させ、連鎖的な離職につながるリスクも抱えています。目の前の1人の退職の裏に、数人分の見えないコストが隠れているという前提で対策を考えることが重要です。

個別の対話を仕組みにする

3つの理由への対策として最も効果が高いのは、特別なイベントではなく「仕組みとしての定期的な個別対話」です。月に一度、10分でもいいのでベテランスタッフと一対一で話す時間を先にカレンダーに入れてしまう。その場で業務の進捗だけでなく、「最近やりにくいと感じていることはありますか」と一言添えるだけで、違和感が積み重なる前に拾い上げることができます。私が関わってきた医院の中でも、この10分間の習慣を続けた医院とそうでない医院とでは、承継後1年間のベテラン離職率に明確な差が出ていました。特別な面談スキルよりも、まず「継続すること」自体に価値があるのだと実感しています。

まとめ|承継後の離職は「関係の引き継ぎ不足」から起きる

事業承継後にベテランスタッフが辞めてしまう理由は、待遇でも能力でもなく、暗黙の了解の断絶・存在価値の否定・意思決定からの疎外という、関係性の引き継ぎ不足にあります。裏を返せば、これらは院長の関わり方次第で防げる離職でもあります。前院長のやり方をすべて踏襲する必要はありませんし、すべてを変える必要もありません。大切なのは、変えるにしても残すにしても、その理由をスタッフ本人に届く言葉で伝え続けることです。

とはいえ、日々の診療に追われる中で、これを院長おひとりで継続するのは簡単なことではありません。私自身、渦中にいるときほど自分の関わり方を客観的に見るのが難しいことを痛感してきました。だからこそ、外部の第三者が定期的に関わることで、院長が言葉にしにくい部分を整理し、ベテランスタッフとの関係を立て直すお手伝いができます。一人で抱え込まず、まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。承継という特殊な状況だからこそ、早い段階でご相談いただくことが、結果的に一番の近道になります。

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よくある質問

Q1. ベテランスタッフに辞める気配を感じたら、どう声をかければいいですか?

まずは業務の話からではなく、「最近どうですか」と率直に近況を尋ねる雑談から始めてください。評価や詰問のニュアンスを避け、率直に話せる空気をつくることが第一歩です。

Q2. 前院長のやり方を変えないと経営が改善しない場合はどうすればいいですか?

変える内容そのものより、変える理由と背景を先に個別に伝えることが重要です。結果だけを一方的に伝えるのではなく、プロセスへの関与を感じてもらう工夫が離職防止につながります。

Q3. すでに辞意を伝えられてしまいました。引き止めるべきですか?

条件面での引き止めは根本原因を解決しないため効果が薄い傾向にあります。引き止めよりも、率直な退職理由のヒアリングと感謝を伝えることを優先してください。

Q4. 新人よりベテランの離職を優先して防ぐべき理由はありますか?

ベテランの離職は技術やノウハウの喪失に加え、残るスタッフの不安を増幅させ連鎖離職を招きやすい点で、経営への影響がより大きくなる傾向があります。

Q5. 院長一人でこうした人間関係の問題に対応するのは限界を感じます。

多くの院長先生が同じ悩みを抱えています。第三者が間に入ることで、院長が言いにくいことも整理して伝えられるようになります。まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。

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この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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