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歯科医院のスタッフ面談1on1完全ガイド|質問例と進め方

歯科医院のスタッフ面談1on1完全ガイド|質問例と進め方
目次

「面談のやり方が分からない」——継承2〜3年目の院長が抱える孤独

土曜日の診療後、スタッフルームに歯科衛生士を一人ずつ呼んで話を聞く。そこまではできても、次の瞬間に「何を話せばいいのか」が分からなくなり、結局「最近どう?」「困ったことない?」という当たり障りのない一言で終わってしまう——。継承2〜3年目の院長先生から、こうしたお悩みを本当によくお聞きします。

前院長の時代は、スタッフとの距離感も、面談というより日々の雑談の延長で信頼関係が築かれていたのかもしれません。ところが代替わりした途端、スタッフの目には「まだ知らない人」「前の院長とどうしても比べてしまう相手」として映ります。そこに追い打ちをかけるのが、面談という「型」のなさです。診療報酬やインプラントの症例には自信があっても、スタッフの本音を引き出す面談の進め方は、大学でも研修医時代でも誰も教えてくれなかったはずです。

面談がうまくいかないのは、院長の人間力が足りないからではなく、正しいやり方を教わっていないだけです。 これは技術です。技術である以上、正しい手順とコツを知れば、誰でも今日から実践できます。この記事では、多くの承継院長・開業医の面談同席やスタッフ面談代行を行ってきた経験をもとに、歯科医院における1on1面談の具体的な進め方と質問例を、実践レベルで解説していきます。

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歯科医院の面談で起きている「すれ違い」の本質

歯科衛生士や歯科助手との面談で最も多い失敗は、面談を「業務連絡の場」や「注意指導の場」にしてしまうことです。院長にとっては「せっかく時間を作ったのだから、気になっていたことを伝えよう」という善意であっても、スタッフ側からすると「呼び出されて説教された」という記憶しか残りません。結果として、次回の面談は形骸化し、スタッフは本音を話さなくなります。

私自身も、開業医の先生方の面談に同席する中で、院長が一生懸命「改善してほしい点」を話し続け、スタッフがひたすらうなずくだけという場面を何度も目にしてきました。院長は「ちゃんと伝えられた」と満足そうにされていましたが、面談後にそのスタッフにお話を伺うと「また怒られる時間だった」と感じていたのです。このギャップこそが、離職の芽になります。

歯科医院のスタッフ面談とは、本来「業務の進捗確認」ではなく、スタッフが安心して本音を話せる唯一の時間を意図的につくる場です。日々の診療中は患者さんの前で本音を言えませんし、忙しい合間の立ち話では深い話にはなりません。だからこそ、意図的に時間を区切って「あなたの話を聞くための時間」を設けることに意味があります。ある調査では、定期的な1on1を実施している職場のほうが、離職率が有意に低いという結果も報告されており、面談の頻度そのものが定着率に直結することが分かってきています。

さらに歯科医院特有の事情として、院長とスタッフの間には「治療方針を決める人」と「それを実行する人」という上下関係がどうしても存在します。この関係性の中で本音を話してもらうには、院長側が意識的に「今日は評価者としてではなく、あなたの話を聞く人としてここにいる」という姿勢を示す必要があります。継承したばかりの院長は、この姿勢の作り方そのものに慣れていないことが多く、結果として面談が「診療の延長」のような雰囲気になってしまいがちです。

なぜうまくいかないのか——3つの原因

原因1:目的が「評価」なのか「対話」なのか曖昧なまま始めている

面談の冒頭で「今日は最近の仕事ぶりについて話そうか」と切り出すと、スタッフは無意識に「評価される」と身構えます。評価面談と1on1対話は、本来まったく別物です。評価面談は年に1〜2回、給与や昇給に関わる話をする場。1on1は毎月、スタッフのコンディションや悩みを聞く場。この二つを混同したまま同じ形式で行ってしまうと、スタッフは常に緊張した状態で本音を言えなくなります。

原因2:院長が「話す側」になってしまっている

これは特に前院長との比較に悩む2代目・3代目院長に多い傾向です。「自分の考えを分かってもらわなければ」という焦りから、つい話す時間が長くなります。理想の面談は、院長が話す時間が2〜3割、スタッフが話す時間が7〜8割です。しかし継承したばかりの院長ほど、無意識に「自分の医院の方向性」を語ることに時間を使ってしまいます。

原因3:面談の頻度と場所が定まっていない

「気になったときに呼ぶ」というスタイルの面談は、スタッフにとって予測不可能でストレスになります。急に呼ばれると「何かまずいことをしたのでは」と不安になるものです。また、診療スペースの一角や、患者さんの声が聞こえる場所で行う面談は、本音を引き出す環境として不十分です。場所と頻度が決まっていない面談は、スタッフにとって「安心できる場」ではなく「不意打ちの場」になってしまいます。

私たちがご支援した医院の中には、開院当初は「気づいたときに立ち話で済ませる」というスタイルだったところ、スタッフから「話しかけられるとドキッとする」という声が出ていた例がありました。面談日をあらかじめカレンダーに固定し、場所も院長室に統一したところ、数ヶ月後には「面談の日が来るのが楽しみになった」という声に変わったそうです。仕組みを整えるだけで、スタッフの受け止め方はここまで変わります。

効果的な面談・1on1の進め方——6つのステップ

ステップ1:頻度と時間を先に決めてカレンダーに固定する

理想は月1回、1人あたり15〜20分です。歯科衛生士・歯科助手ともに人数が多い医院では毎月全員は難しいため、その場合は「経験年数の浅いスタッフやキーパーソンは月1回、ベテランは2ヶ月に1回」といった形で優先順位をつけても構いません。重要なのは「不定期」をやめ、スタッフが「来月もこの日がある」と見通しを持てるようにすることです。

ステップ2:冒頭は必ず「業務外」の話から入る

いきなり「最近の仕事はどう?」と聞くと、評価モードのスイッチが入ってしまいます。最初の2〜3分は「最近体調はどう?」「休みの日は何してた?」といった業務外の会話から始めることで、スタッフの緊張がほぐれ、本音を話しやすい空気が生まれます。これはコーチングの世界で「ラポール形成」と呼ばれるプロセスで、信頼関係の土台を作る非常に重要な時間です。

ステップ3:院長は「聞く7割・話す3割」を意識する

面談中、院長がつい沈黙を埋めたくなる瞬間があります。しかしその沈黙こそ、スタッフが考えを言葉にしようとしている大切な時間です。相手が話し終わる前に助言や意見を挟まず、最後まで聞き切ることを意識してください。相槌は「うんうん」だけでなく、「それでどう感じたの?」と相手の言葉を広げる質問を挟むと、話が深まります。

ステップ4:オープンクエスチョンで具体的な出来事を聞く

「はい・いいえ」で終わる質問(クローズドクエスチョン)ではなく、相手が自由に答えられる質問(オープンクエスチョン)を中心に組み立てます。例えば「困ったことはない?」ではなく「この1ヶ月で一番大変だったことは何?」と聞くと、具体的なエピソードが出てきやすくなります。

ステップ5:フィードバックは「事実→影響→期待」の順で伝える

改善してほしい点を伝える場合も、頭ごなしに指摘するのではなく、「事実(何があったか)→影響(それによって何が起きたか)→期待(次はどうしてほしいか)」の順で伝えると、スタッフは防御的にならずに受け止めやすくなります。例えば「先週の器具準備が遅れていたよね」で終わらせず、「先週、器具準備が遅れて診療の開始が10分ずれてしまったんだ。次からは開始15分前に声をかけ合えると助かる」というように、具体性を持たせることが大切です。

ステップ6:面談の最後は「次回までの小さな約束」で締める

面談の終わりに「じゃあ来月までにこれをやってみよう」という小さなアクションを一つだけ決めます。大きな目標である必要はありません。「来月までに新人さんに一つ教える機会を作ってみる」といった、無理のない一歩で十分です。面談は一回で完結するものではなく、次につながる約束の積み重ねが信頼を育てます。

職種別・シーン別の質問例と面談シートの活用法

実際の質問例は、相手の職種や経験年数によって変える必要があります。以下は、私たちが医院の面談代行を行う際に実際に使用している質問例の一部です。

対象質問例
新人スタッフ(入職〜半年)「今、一番不安に感じていることは何?」「先輩に聞きにくいことはある?」
中堅の歯科衛生士「今の仕事で、もっと任されたいと思うことはある?」「後輩の指導で困っていることは?」
ベテラン・パートスタッフ「今の働き方で無理をしていることはない?」「医院に対して感じている変化は?」
歯科助手「診療補助で一番やりがいを感じる瞬間は?」「衛生士さんとの連携でやりにくい点は?」

質問を思いつきで投げかけるのではなく、簡単な面談シートを用意しておくことをおすすめします。シートには「前回の約束の振り返り」「最近の業務での気づき」「プライベートを含めた体調面」「次回までのアクション」の4項目があれば十分です。凝った様式は不要で、A4一枚にメモできる程度のもので構いません。面談シートを積み重ねていくと、スタッフ一人ひとりの変化が可視化され、「あの時こう言っていたな」と半年前の会話を覚えていてくれることそのものが、スタッフにとって大きな信頼材料になります。

質問例をそのまま使うだけでなく、答えが一言で終わってしまったときの「深掘りの一言」も用意しておくと安心です。例えば「特にないです」と返ってきたときは、無理に聞き出そうとせず「じゃあ、もし何か変えられるとしたら、どんな小さなことでも変えたい?」と角度を変えて聞くと、話が続くことがあります。沈黙が続いても焦らず、5秒程度は待つ姿勢も大切です。すぐに次の質問に移ってしまうと、スタッフは「本当は聞く気がないのでは」と感じてしまうことがあります。

前院長と比較されがちな継承院長だからこそ、この面談シートの蓄積は強力な武器になります。前院長の「なんとなくの信頼関係」に対して、新院長は「記録に基づいた一貫した関わり」で信頼を積み上げることができるからです。実際に、面談代行でご支援した医院では、院長が毎回の面談内容を簡単に記録するようになってから、半年後のスタッフアンケートで「院長は自分のことを覚えていてくれる」という回答が増えたという声もいただいています。

面談を院長一人の孤独な仕事にしないために

ここまで進め方や質問例をお伝えしてきましたが、実際にやってみると分かる通り、面談は決して簡単な仕事ではありません。診療の合間を縫って時間を作り、感情的にならずにフィードバックを行い、それでもスタッフが辞めてしまうこともあります。継承したばかりの院長先生が、前院長と比較されながら一人でこのプレッシャーを背負い続けるのは、想像以上に消耗することです。

私自身も、経営者として人間関係の悩みを一人で抱え込んでいた時期があり、誰かに話を聞いてもらうだけでどれほど気持ちが軽くなるかを実感した経験があります。院長先生も同じ立場に置かれています。スタッフの本音を聞く役割である一方で、院長自身の本音を聞いてくれる相手は、医院の中にはなかなかいません。

だからこそ、面談のスキルを身につけることと同時に、院長自身が孤独にならない仕組みを作ることも、スタッフとの信頼関係を長く保つためには欠かせません。面談のやり方に正解はあっても、それを一人で完璧に実践し続けるのは容易ではないのです。うまくいかない月があっても、それは院長の力不足ではなく、伴走者がいないだけかもしれません。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 面談の頻度はどれくらいが適切ですか?

A. 目安は月1回、1人あたり15〜20分です。人数が多く毎月は難しい場合は、経験の浅いスタッフやキーパーソンを優先し、2ヶ月に1回のローテーションにしても構いません。大切なのは頻度そのものより、次の面談日をスタッフが予測できる状態を作ることです。

Q2. スタッフが本音を話してくれません。どうすればいいですか?

A. いきなり本音を話してもらおうとせず、まずは業務外の雑談から入り、聞く姿勢(相槌・沈黙を待つこと)を徹底してください。数回の面談を重ねる中で少しずつ心を開いてもらう、という前提で臨むことが大切です。

Q3. 面談の場所はどこがいいですか?

A. 患者さんやほかのスタッフの声が届かない、個室に近い環境が理想です。院内に適した場所がない場合は、診療前後の時間に院長室や休憩スペースを一時的に使うなど、工夫をしている医院も多くあります。

Q4. フィードバックで厳しいことを伝える必要がある場合はどうすればいいですか?

A. 「事実→影響→期待」の順で具体的に伝えることを意識してください。感情的な言葉を避け、次にどうしてほしいかまでセットで伝えることで、スタッフも受け止めやすくなります。

Q5. 前院長と比較されてしまい、面談でも話を聞いてもらえている実感が持てません。

A. 前院長との比較は、継承直後の院長先生の多くが直面する壁です。焦って前院長と同じ関わり方を目指すのではなく、面談シートなどで「記録に基づいた一貫した関わり」を積み重ねることが、新院長ならではの信頼構築につながります。一人で抱え込まず、第三者のサポートを受けることも有効な選択肢です。

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この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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