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育休復帰スタッフとチームの溝、院長の橋渡し術

育休復帰スタッフとチームの溝、院長の橋渡し術

産休・育休から復帰したスタッフが、時短勤務でチームに戻ってくる。本来はおめでたいはずのその瞬間に、なぜか院内の空気がぎこちなくなる――そんな経験はありませんか。復帰したスタッフは「迷惑をかけて申し訳ない」と縮こまり、フォローする側のスタッフは「なんで私たちばかり大変な思いをするの」と本音を飲み込む。院長であるあなたは、どちらの味方をすればいいのか分からず、結局「まあ、お互い様だから」という一言で済ませてしまっていないでしょうか。

この気まずさの正体は、制度の問題ではなく「橋渡し役の不在」です。 育休・時短の法律や給与の話は世の中にあふれていますが、復帰スタッフとフォロー側スタッフの間に生まれる感情のズレを、院長がどう調整するかを具体的に教えてくれる情報はほとんどありません。この記事では、2代目・3代目院長であるあなたが、コーチング的コミュニケーションでこの溝をどう埋め、チーム全体の納得感を作っていくかを、実例とともにお伝えします。

目次

育休・時短復帰スタッフの職場復帰で生まれる「見えない溝」

復帰初日、当の本人は誰よりも緊張しています。ブランクへの不安、子どもの体調による急な休みへの申し訳なさ、そして「以前と同じようには働けない自分」への焦り。一方でフォローする側のスタッフは、繁忙期を耐え抜いてきた疲労と、「復帰したのにあまり戦力になっていない」という戸惑いを抱えています。どちらも間違ってはいません。ただ、両者の気持ちが交わることなく、それぞれの胸の内にしまい込まれてしまうことが、この溝の正体です。

復帰スタッフの遠慮と申し訳なさ

復帰したスタッフの多くは、「早く帰ります」と言うたびに小さく頭を下げるようになります。ある歯科衛生士は、時短勤務で17時に退勤する際、毎日「すみません、お先に失礼します」と誰にともなく謝りながら帰っていたそうです。周囲は特に何も思っていなかったとしても、本人の中では「迷惑をかけている」という自己評価が積み重なり、やがて「もう辞めたほうがいいのかもしれない」という結論にたどり着いてしまうことがあります。

フォロー側スタッフの疲弊と本音

一方で、残業や急な担当変更を引き受けているスタッフの中には、口には出さないものの「自分たちの頑張りは誰にも評価されていない」という不満を溜め込んでいる人がいます。私自身、以前チームで人間関係の調整に携わっていたとき、フォロー側のスタッフから「大変なのは分かってるけど、誰も『ありがとう』って言ってくれないのがつらい」と打ち明けられたことがありました。不満の本質は業務量そのものよりも、その頑張りが誰にも見えていないという孤独感にあることが少なくありません。

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なぜ不公平感が生まれるのか──院長が見落としがちな3つの原因

不公平感は「時短だから」「制度だから」という単純な理由だけでは生まれません。そこには院長の関わり方に起因する構造的な原因が隠れています。

原因1 業務量の再配分が曖昧なまま現場任せになっている

復帰スタッフの担当業務をどう減らし、誰がどこまでカバーするのかを、院長が明確に決めずに現場のスタッフ同士の話し合いに委ねてしまうケースが多く見られます。悪意はなくとも、結果として声の大きいスタッフやリーダー格のスタッフに負担が偏り、それが不満の温床になります。

原因2 「言いにくい空気」が両者の間に溜まっていく

復帰スタッフは「大変な思いをさせてごめんね」と言いたくても、それがかえって相手を苦しめるのではと躊躇します。フォロー側も「早く帰ってずるい」とは口が裂けても言えません。結果として、双方が本音を飲み込んだまま、表面上は穏やかな職場を演じ続けることになります。言えない本音は消えるのではなく、静かに蓄積していきます。

原因3 院長が「間に入らない」ことで感情が放置される

最も見落とされがちなのがこの原因です。院長は「大人同士だから、うまくやってくれるだろう」と考え、あえて介入しないことを選びがちです。しかし、雇用主として業務分担の最終責任を持つのは院長です。当事者同士に解決を委ねている間に、感情のもつれは修復不可能なところまで進んでしまうことがあります。ある調査では、時短勤務者の業務を代わりに担う同僚の不満が放置された結果、優秀な人材から先に離職していくという傾向が指摘されています。院長が動かなければ、静かに損なわれていくのはチームの土台そのものです。

院長がやってしまいがちなNG対応

橋渡し役を担おうとするあまり、かえって溝を深めてしまう対応もあります。ここでは代表的な2つを見ていきましょう。

「みんな理解してあげて」で済ませてしまう

朝礼やミーティングで「〇〇さんも大変だから、みんなでフォローしてあげてね」と一言で片付けてしまう院長は少なくありません。しかしこの言葉は、フォロー側の負担そのものには何も触れていないため、「結局私たちが我慢すればいいんですね」という受け取られ方をしてしまいます。精神論での呼びかけは、不満を解消するどころか、言えない空気をさらに強化してしまいます。

復帰スタッフを特別扱いする、または逆に気を使いすぎて放置する

復帰スタッフに気を遣うあまり、業務の相談や指導を避けてしまう院長もいます。一見優しさに見えますが、本人からすれば「もう戦力として見られていないのでは」という不安につながります。反対に、以前と全く同じ働き方を期待してしまうと、本人もフォロー側も疲弊します。どちらかに偏った配慮は、必ずもう一方の不公平感を生みます。

コーチング的コミュニケーションで橋渡しをする方法

ここからが本題です。院長がすべきことは、制度を整えることではなく、双方の間に立って感情の翻訳者になることです。

復帰スタッフへの関わり方──「聞く」から始める

復帰前後の面談では、まず「今、何が一番不安ですか」とオープンクエスチョンで問いかけてください。「大丈夫?」というクローズドな質問では「大丈夫です」としか返ってきません。コーチングの基本である傾聴と question の質が、本人の本音を引き出す鍵になります。私自身、復帰スタッフとの対話で「実は迷惑をかけている自覚があって、辞めたほうがいいのかと悩んでいた」という言葉を引き出せたことがあります。もし院長が「大丈夫?」の一言で終わらせていたら、この本音には決して辿り着けなかったはずです。

フォロー側スタッフへの関わり方──頑張りを可視化して伝える

フォロー側には「大変だよね、ありがとう」という言葉を、院長自身の口から、具体的な場面を挙げて伝えることが重要です。「先週、〇〇さんが急に休んだ日、あなたが受付から診療補助まで一人でカバーしてくれて助かった」というように、抽象的な労いではなく、具体的な行動への承認が納得感を生みます。承認された経験があるスタッフは、次の負担にも前向きに向き合えるようになります。

両者をつなぐ「場」を院長がデザインする

復帰スタッフとフォロー側スタッフが直接ぶつかり合う場を作る必要はありません。むしろ院長が間に立ち、それぞれの言葉を「翻訳」して相手に伝える役割を担うことが有効です。たとえば「〇〇さんは、みんなに迷惑をかけていると気にしていました。同時に、戻ってこられたことをとても感謝しています」と院長が代弁することで、直接言えなかった気持ちが間接的に届きます。院長が翻訳者になることで、当事者同士が直接ぶつからずに済む安全な回路ができます。

院長にしかできない具体的アクション

考え方だけでなく、明日から実践できる具体的な行動に落とし込みます。

復帰前・復帰1か月後・復帰3か月後の3回面談を設計する

復帰直後だけでなく、1か月後、3か月後にも短時間の面談を組み込んでください。復帰直後は緊張や遠慮が先行し本音が出にくいものですが、1か月ほど経つと現実的な不満や疲労が表面化してきます。このタイミングを逃さずキャッチアップすることで、小さな不満が離職や関係悪化につながる前に手を打てます。

業務分担表を院長主導で作り、誰が見ても分かる形にする

「誰が何をどこまでカバーするか」を口頭ではなく、簡単な一覧表にして共有してください。曖昧な分担が不公平感の最大の原因である以上、可視化するだけで多くの不満は和らぎます。あわせて、その分担は状況の変化に応じて定期的に見直すことも院長から伝えておきましょう。

感謝を「言葉」と「仕組み」の両方で残す

朝礼での一言だけでなく、月に一度のミーティングで「今月助け合えたこと」を全員で共有する時間を作るのも有効です。ある医院では、月末のミーティングで各スタッフが「今月誰にどう助けられたか」を一言ずつ発表する時間を設けたところ、フォロー側の不満が目に見えて減ったという報告があります。感謝は自然発生を待つものではなく、院長が仕組みとして設計するものです。

チーム全体の納得感を育てる長期的な視点

橋渡しは一度で終わるものではありません。育休・時短復帰は今後も繰り返し起こるライフイベントです。だからこそ、その都度「お互い様」を口先だけの言葉ではなく、実際に機能する文化として育てていく必要があります。

「お互い様」を仕組みとして根づかせる

時短勤務者が助けられる側にいる時期もあれば、将来的にフォロー側に回る時期も必ず訪れます。この循環を院長が言語化して伝えることで、「今大変な思いをしているのは自分だけではない」という長期的な安心感が生まれます。

制度よりも関係性がチームを支えるという視点を持つ

どれだけ立派な就業規則を整えても、日々の関係性が荒れていればスタッフは疲弊し続けます。制度はチームを守る土台にすぎず、実際にチームを支えるのは日々の関わり方です。 院長がこの橋渡し役を意識的に担い続けることこそが、承継後のチームづくりにおいて最も重要な仕事の一つだと、私は実感しています。

まとめ

育休・時短復帰スタッフとフォロー側スタッフの間に生まれる不公平感は、制度の不備ではなく、感情を翻訳し橋渡しする役割が不在であることから生まれます。院長が双方の声を丁寧に聞き、具体的な承認と可視化を通じてチームをつなぐことで、誰かが我慢を強いられるのではなく、全員が納得できる職場が育っていきます。この橋渡しは一人で抱え込むには繊細で難しいテーマです。もし今、院内の空気に違和感を感じているなら、一人で抱え込まず、まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。

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よくある質問

Q1. 時短勤務スタッフに業務量を減らすとフォロー側から不満が出ます。どう伝えればいいですか。

業務量を減らすこと自体を謝罪的に伝えるのではなく、「なぜその分担にしているか」という理由と、「フォロー側の頑張りをどう評価しているか」をセットで伝えることが大切です。理由が見えないまま結果だけを伝えると、不公平感だけが残ってしまいます。

Q2. 復帰したスタッフが「申し訳ない」と言い続けて辛そうです。どう声をかければいいですか。

「申し訳ない」という言葉の裏には、戦力として認められているか分からない不安が隠れていることが多いです。謝罪を否定するのではなく、「今できていること」を具体的に伝え、本人の存在価値を言葉にして返すことが有効です。

Q3. スタッフ同士で直接話し合わせたほうがいいのでしょうか。

感情的なもつれがある場合、当事者同士に任せると余計にこじれることがあります。まずは院長が個別に話を聞き、双方の気持ちを翻訳して伝える役割を担ってから、必要に応じて場を設けるという順番が安全です。

Q4. 育休から複数人が同時期に時短復帰する場合、対応は変わりますか。

人数が増えるほど、業務分担の可視化と定期的な見直しの重要性が高まります。個別面談は引き続き必要ですが、全体のシフトや役割分担を院長が主導して調整する場面が増えると考えておくとよいでしょう。

Q5. こうした橋渡しは院長一人で担うしかないのでしょうか。

理想的には院長が最終的な調整役を担いますが、リーダー的なスタッフに橋渡しの一部を任せることも可能です。ただし、その場合も院長が状況を把握し続け、丸投げにならないよう定期的に確認することが欠かせません。

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この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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