「前院長の方が良かった」その一言に、心が折れそうになっていませんか
診療が終わったあと、スタッフルームでふと聞こえてきた「前の院長先生の方がやりやすかったよね」というひと言。直接自分に向けられた言葉ではなくても、胸に突き刺さるように感じた経験はありませんか。
継承して2〜3年目の院長先生から、私たちPlumChanには本当に多くのご相談が寄せられます。「経営数値も診療の質も上げているのに、なぜかスタッフとの距離が縮まらない」「前院長のときはあんなに雰囲気が良かったのに、自分になってから空気が重い」——そうした声の根っこには、必ずと言っていいほど「前院長と比較される辛さ」があります。
あなたが感じている孤独は、能力不足のサインではなく、真剣に医院と向き合っている証拠です。先代というゴールポストが常に隣に立っている状態で、スタッフの信頼を一から積み直そうとしているのですから、苦しくて当然なのです。この記事では、なぜ二代目・三代目院長が前院長と比較されてしまうのか、その本質的な原因を3つに整理し、比較される関係から「頼られる関係」へと変えていくための具体的な考え方とアクションをお伝えします。院長先生おひとりで抱え込まずに、まずは現状を客観的に理解するところから始めましょう。
なぜ二代目院長は「前院長との比較」にこれほど苦しむのか
比較されること自体は、経営者交代が起きればどんな業界でも一定程度は避けられません。しかし歯科医院という現場では、その比較が特に長く、深く尾を引く傾向があります。理由は、歯科医院が「治療技術」と「人間関係」が密接に結びついた極めて属人的な職場だからです。
比較されているのは「診療」ではなく「関係性」
多くの院長先生は「自分の治療技術や経営判断が前院長に劣っていると思われているのでは」と受け止めがちです。しかし実際にスタッフにヒアリングをすると、比較の対象は治療の腕前よりも「話しかけやすさ」「指示の出し方」「感謝の伝え方」といった関係性の部分であることが圧倒的に多いのです。つまり比較の正体は技術論ではなく、コミュニケーションのスタイルの違いにあります。ここを取り違えてしまうと、「もっと勉強しなければ」と技術研鑽ばかりに時間を使い、肝心のスタッフとの関係性はますます置き去りになってしまいます。
先代への敬意とスタッフからの信頼は別物
先代の院長を尊敬し、その診療理念を引き継ぎたいと考える二代目院長は少なくありません。しかしそれと「スタッフから自分自身が信頼されること」は、まったく別のプロセスです。先代を立てようとするあまり自分の意見を言わずにいると、スタッフからは「頼りない」「何を考えているか分からない」と映ってしまうことがあります。先代への敬意と、自分自身のリーダーシップを確立することは、両立させなければならない別々の課題なのです。
私たちが承継期の医院で研修を行う際、よく引用するのが事業承継全般に関する統計です。帝国データバンクの調査では、国内企業の後継者不在率は近年でも50%を超える水準で推移しており、後継者が決まっている場合でも、承継後の組織づくりに苦戦するケースが非常に多いことが指摘されています。歯科医院も例外ではなく、経営権の承継はできても「人心の承継」には別の準備と時間が必要だという点が、あまり知られていない落とし穴です。
スタッフに比較され、溝が深まる3つの原因
では、なぜ比較の溝はなかなか埋まらないのでしょうか。私たちがこれまで数多くの歯科医院で面談代行やコーチングを行ってきた経験から、原因は大きく3つに整理できます。
原因1 変化への説明不足
新院長になると、予約枠の見直し、器材や材料の変更、診療方針のアップデートなど、さまざまな変化が起こります。院長先生にとっては「医院を良くするための当然の判断」でも、スタッフにとっては事前説明のない変化は「自分たちの意見を聞かずに勝手に決められた」という不信感につながります。ある医院では、受付の予約管理システムを効率化のために変更したところ、スタッフから「前院長は私たちに相談してから決めてくれた」という不満が噴出しました。変更内容そのものよりも、プロセスへの不満が比較を生んでいたのです。
原因2 感情ではなく正論で押し通す
二代目院長は経営の勉強を重ねてきた分、「正しいこと」を語る力に長けています。しかし正論だけを伝えると、スタッフは「詰められている」と感じ、心を閉ざしてしまいます。前院長が多少非効率でも「まあいいか」と受け流していた場面で、二代目院長が正確に指摘するようになると、それだけで「厳しくなった」「怖くなった」という評価に変わってしまうことがあるのです。正しさは、伝え方次第で刃にも橋にもなります。
原因3 前院長との違いを「否定」と捉えられている
これが最も根深い原因です。院長先生としては単に自分らしいやり方を選んでいるだけなのに、スタッフ側は無意識に「前院長のやり方はダメだったと言われている」と受け取ってしまうことがあります。特に長く前院長のもとで働いてきたベテランスタッフほど、この感覚は強くなります。私自身も、家業を継いだ経営者の方々への支援を通じて、先代の色を変えることが「先代を否定すること」だと周囲に誤解され、孤立してしまう場面を数多く見てきました。人間関係の悩みは、能力の問題ではなく「伝わり方」の問題であることが本当に多いのです。
比較される院長から、頼られる院長になるための考え方
原因が見えてきたら、次は考え方の転換です。比較をゼロにすることはできませんが、比較を「対立」ではなく「橋渡し」に変えることはできます。
「同じになる」のではなく「違いを認めてもらう」
前院長と同じようにふるまおうとすればするほど、無理が生じ、スタッフからは「無理して似せている」と見抜かれてしまいます。目指すべきは前院長のコピーになることではなく、「先代とは違うけれど、この院長にもついていきたい」とスタッフに思ってもらうことです。そのためには、まず院長先生自身が「自分はこういう医院を作りたい」というビジョンを言語化し、スタッフに繰り返し伝える必要があります。
先代を否定せず、自分の言葉で医院の未来を語る
効果的なのは、「前院長のここが素晴らしかった。だからこそ、それを引き継ぎながら、こういう部分をさらに良くしていきたい」という語り口です。否定ではなく継承と発展という文脈で語ることで、スタッフの警戒心はぐっと下がります。ある医院では、院長交代の朝礼で「前院長が大切にしてきた〇〇は変えません。ただ、皆さんがもっと働きやすくなるように、△△だけは一緒に見直していきたい」と伝えたところ、スタッフからの反発が明らかに和らいだという事例もありました。変化を伝える言葉に「継承」という一文を添えるだけで、受け取られ方は大きく変わります。
明日からできる、スタッフとの信頼関係を築く具体的アクション
考え方を変えるだけでは現場は動きません。ここからは、すぐに実践できる具体的な行動をご紹介します。
1対1面談で本音を引き出す質問
朝礼やミーティングのような全体の場では、スタッフは本音を語りません。月に一度でよいので、5〜10分程度の1対1面談の時間を確保しましょう。その際「最近どう?」という漠然とした質問ではなく、「今の医院で続けてほしいこと」「変えてほしいと感じていること」の2つを具体的に尋ねることがポイントです。前院長との比較についても、遠回しに聞くのではなく「前の体制と比べて、やりにくくなったと感じることはある?」と直接尋ねる勇気を持つと、驚くほど本音が返ってくることがあります。
変化を伝える「順番」を変える
変化を伝える際は「決定事項の通達」から始めるのではなく、「なぜ変える必要があるのか」という背景の共有から始めましょう。順番を「背景→理由→内容→スタッフへのお願い」に組み替えるだけで、同じ変更内容でも受け止められ方はまったく違います。特にベテランスタッフには、変更前に個別に一言相談することで、「軽んじられていない」という安心感を与えることができます。
スタッフの前で先代の写真や思い出話を「否定しない」姿勢を見せる
意外と見落とされがちなのが、院内に残る前院長の名残への向き合い方です。診療理念を記したプレートや、長年使ってきた備品、スタッフの間で語り継がれる前院長のエピソードなどを、二代目院長が急いで撤去したり話題を避けたりすると、スタッフは「自分たちの歴史ごと否定された」と感じてしまうことがあります。反対に、前院長の名前を出すことをタブー視せず、「〇〇先生が大事にしていたことは、私も引き継いでいきたい」と自然に口にできる院長は、スタッフから見ても安心感のある存在に映ります。過去を大切にする姿勢そのものが、次の世代の信頼につながっていくのです。
第三者(コーチ)を介した面談代行という選択肢
とはいえ、院長先生自身が聞き手になると、スタッフはどうしても遠慮してしまい、本音を話しきれないことも少なくありません。実際に私自身も、院長と直接話すのが難しいテーマほど、第三者が間に入ることで初めて言葉になる現場を数多く見てきました。PlumChanでは、歯科医院に特化したコーチが第三者としてスタッフ面談を代行し、院長先生には伝えづらい本音を丁寧にヒアリングしたうえで、院長先生への橋渡しを行っています。「前院長の頃は良かった」という言葉の裏にある本当の不安や要望を可視化することで、院長先生ご自身が変わるべき部分と、変える必要のない部分を明確に切り分けられるようになります。
まとめ|比較されるのは、あなたが院長として本気で向き合っている証拠
前院長と比較される辛さは、決してあなたの能力不足が原因ではありません。むしろ、先代が築いてきた歴史のある医院を大切にしながら、自分らしい経営をしようと真剣に向き合っているからこそ生まれる悩みです。
比較の正体は「関係性の違い」であり、原因は「説明不足」「正論偏重」「否定と誤解されること」の3つに整理できます。そして解決の糸口は、先代を否定せず継承と発展の文脈で語り、1対1の対話を通じてスタッフの本音を丁寧に拾い上げていくことにあります。比較されている今この瞬間も、あなたと先代を比べるだけの歴史と信頼が、この医院にはすでに積み上がっているのです。
もし今、スタッフとの関係に悩み、一人で抱え込んでしまっているなら、どうか無理をなさらないでください。第三者の視点を入れることで、驚くほどスムーズに関係が改善するケースを、私たちは数多く見てきました。比較される痛みは、時間が経てば自然に消えるものではなく、正しい向き合い方を知ることで初めて和らいでいきます。ひとりで抱え込む時間を、これ以上長くする必要はありません。まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。
よくある質問
Q1. 二代目院長がスタッフから前院長と比較されるのはなぜですか?
A. 環境変化への不安から、スタッフが慣れた前院長のやり方を無意識の基準にするためです。
Q2. 先代のやり方を否定せずに医院を変えていくにはどうすればいいですか?
A. 先代への感謝を言葉にしたうえで、変更理由を丁寧に伝えると受け入れられやすくなります。
Q3. 承継直後にスタッフが次々と辞めてしまいます。何に気をつければいいですか?
A. 一方的な通達を避け、1対1の対話で不安や不満を先に聞くことが重要です。
Q4. スタッフとの面談がうまくいかない場合、どこに相談すればいいですか?
A. 歯科特化のコーチング会社への面談代行相談が有効な選択肢のひとつです。
Q5. 前院長と比較されるストレスで自信を失いそうなときはどうすればいいですか?
A. 比較は関心の裏返しと捉え、第三者に本音を話せる場を持つと気持ちが楽になります。
