歯科医院承継後のスタッフ面談5つのコツと本音の引き出し方

歯科医院を継いでから、スタッフとの面談のたびに胸がざわつく——そんな感覚を抱えていませんか。「特に問題ありません」という短い返事の奥に、本当は何かあるはずなのに、それ以上踏み込めない。診療中は院長として堂々と振る舞えているのに、面談室に二人きりになった途端、言葉が出てこなくなる。そう感じている2代目・3代目院長は、決して少なくありません。承継してから2〜3年、父親である前院長と同じ椅子に座っているはずなのに、スタッフから向けられる視線はどこか違う。その違和感の正体が分からないまま、面談を先延ばしにしてしまっている院長も多いのではないでしょうか。

歯科医院承継後のスタッフ面談のコツとは、前院長との比較や信頼関係の薄さといった承継特有の壁を正しく理解したうえで、古参スタッフが安心して本音を話せる質問設計と場づくりを行うことを指します。

このページでは、承継したばかりの院長がなぜ面談でつまずくのか、その本質的な理由と、明日から実践できる具体的な面談のコツを、実際の相談事例を交えてお伝えします。

目次

なぜ承継直後の面談はこんなに苦しいのか

面談の予定をカレンダーに入れた瞬間から、胃の奥がぎゅっと重くなる。そんな声を、承継2〜3年目の院長から本当によく伺います。ある医院の院長は「面談室に入る前に、いつも深呼吸をしてから扉を開けています」と話してくれました。相手は自分より長くこの医院で働いてきた歯科衛生士で、前院長のことを誰よりもよく知っている存在です。

厚生労働省の調査でも、医療・福祉分野の離職理由の上位には「人間関係」が常に挙がっており、面談という場そのものが機能していない医院ほど、その傾向が強く出る実感があります。承継直後の面談が苦しいのは、あなたのコミュニケーション能力が低いからではありません。「まだ信頼されていない」という土台の上に立たされているから、苦しくて当然なのです。

古参スタッフの表情から「今日の院長は前の先生とは違うな」という視線を感じ取り、余計に言葉を選びすぎてしまう。そうして当たり障りのない会話で終わり、面談後にどっと疲れが押し寄せる。ある院長は「面談のあとほど、患者さんの前で笑顔になるのが難しい日はない」と打ち明けてくれました。それほどまでに、承継直後の面談は院長の心を消耗させるものなのです。この悪循環を断ち切るには、まず「なぜ苦しいのか」を正しく言語化することが第一歩になります。

承継後の面談がうまくいかない本質的な理由

面談がうまくいかないのは、テクニック不足という表面的な問題ではありません。承継という特殊な状況が生み出す、構造的なズレがそこにあります。

私自身、家業を継いだ経営者の相談に数多く関わってきましたが、承継後1〜2年で最も多いのは「何を話しても正解が分からない」という悩みです。前院長時代のスタッフは、これまで別の経営者のもとで積み上げてきた仕事のやり方や価値観を持っています。新院長が良かれと思って発した一言が、「前の先生ならこんな言い方はしなかった」という比較の物差しで測られてしまう。これは能力の差ではなく、積み重ねてきた時間の差が生む、避けられないギャップです。

たとえば、ある2代目院長は、朝礼で前院長と同じように業務連絡だけを簡潔に伝えていたところ、あるスタッフから「前の先生はもっと世間話をしてくれた」と言われ、戸惑ったそうです。同じ行動を取っているつもりでも、受け取る側の記憶の中の前院長像と照らし合わされてしまう。ここに、承継期特有の難しさが凝縮されています。

さらに、承継のタイミングでは組織全体が「様子見モード」に入ります。誰も本音を最初にさらけ出したくない。そんな空気の中で行われる面談は、どれだけ丁寧に質問を用意しても表面的なやり取りに終始しがちです。実際に私が伺ったある医院では、承継から半年間、面談のたびに「大丈夫です」しか返ってこなかったスタッフが、1年を過ぎたころにようやく「実は毎回、何を話しても大丈夫か様子を見ていました」と打ち明けてくれたそうです。この構造を理解しないまま「もっと本音を話してほしい」と焦ると、かえってスタッフは口を閉ざしてしまいます。信頼は面談の回数ではなく、積み重ねた時間の質で育ちます。

本音を引き出せない3つの原因

承継期の面談でスタッフの本音が出てこない背景には、共通する3つの原因があります。ひとつずつ丁寧に見ていきましょう。

原因1:質問が「評価」に聞こえてしまう

「最近どう?」「困っていることはない?」という何気ない質問も、承継直後のスタッフには「値踏みされている」ように受け取られることがあります。特に古参スタッフは、新院長が自分たちの働き方を変えようとしているのではないかという警戒心を抱きやすく、素直な発言を控える傾向があります。

原因2:前院長との違いを恐れて自分を出せない

院長側にも大きな壁があります。「前院長のやり方を否定したくない」「自分の考えを出すと角が立つ」という遠慮から、当たり障りのない質問しかできなくなるケースです。これでは面談が形骸化し、双方にとって時間の無駄になってしまいます。

原因3:一対一で向き合う時間が構造的に足りない

診療と経営、両方を背負う承継直後の院長は物理的に時間が足りません。開業医の週あたりの労働時間は50時間を超えることも珍しくないという調査もあり、面談は「診療の合間に立ち話で済ませるもの」になりがちです。5分程度の立ち話では、スタッフも「今は忙しそうだから」と本題を切り出せずに終わってしまいます。時間をかけずに本音を引き出そうとする姿勢そのものが、スタッフに伝わってしまうのです。

この3つの原因は、それぞれ単独ではなく複雑に絡み合っています。次の章では、この構造を踏まえたうえで、承継期だからこそ効果を発揮する具体的なコツをお伝えします。

承継期の面談で信頼を築く5つの具体的コツ

原因が分かれば、打つ手は見えてきます。ここでは承継期特有の状況を踏まえた、実践的な5つのコツをご紹介します。

最初の面談は「聞くだけ」に徹する

承継直後の面談は、指示や評価の場ではなく「聞く場」と割り切ることが大切です。ある医院では、院長が最初の3回の面談で一切アドバイスをせず、ひたすら相手の話を聞くことに徹したところ、4回目の面談で「実は…」という本音が初めて出てきたという事例があります。人は、自分の話をさえぎられずに最後まで聞いてもらえたという経験が積み重なって初めて、次の一歩を踏み出すものです。焦って結論やアドバイスを急がないことが、遠回りに見えて実は一番の近道になります。

前院長への敬意を言葉にする

古参スタッフにとって前院長は大切な存在です。面談の冒頭で「先生が長年築いてこられた医院を、私も大切にしたいと思っています」と一言添えるだけで、警戒心が和らぐことがあります。否定ではなく継承の姿勢を見せることが、信頼構築の近道です。

オープンクエスチョンで「今」を尋ねる

「はい・いいえ」で終わる質問ではなく、「最近の業務で気になっていることはありますか」といった開かれた質問を使いましょう。過去との比較ではなく「今」に焦点を当てることで、相手も答えやすくなります。

面談の記録と約束したことを必ず実行する

面談で出た小さな要望を放置すると、「話しても変わらない」という諦めにつながります。逆に、たとえ小さなことでも約束を守り続けると、それが信頼残高として積み上がっていきます。言葉より行動が、承継期の信頼をつくります。

明日からできる具体的アクションプラン

コツを理解したら、次は行動に落とし込む段階です。承継期の面談スケジュールと質問例を整理しました。

タイミング面談の目的質問例
承継直後〜1か月関係構築・様子見の緩和「今の職場で心地よく感じている部分は?」
2〜3か月業務上の不満・要望の把握「今の業務で改善したいと感じることは?」
半年〜1年今後の役割・キャリアのすり合わせ「これから挑戦してみたいことは?」

面談前には必ず、その人がこれまでどんな経緯でこの医院に関わってきたかを簡単に振り返っておきましょう。勤続年数や得意な業務、前院長との関わり方を頭に入れておくだけで、質問の解像度が大きく変わります。面談中は、相手の話を遮らずに最後まで聞き切ること、そして面談後は24時間以内に簡単な振り返りメモを残し、次回までに実行することを1つ決めておくと、面談の効果が積み上がっていきます。15分程度の短い面談でも構いません。完璧な一回の面談よりも、短くても続く面談の方が信頼を育てます。私たちがサポートした医院でも、月1回15分の面談を半年続けただけで、スタッフから自発的な提案が出るようになったという声を多くいただいています。

一人では難しいと感じたら—第三者の力を借りるという選択

ここまで具体的なコツをお伝えしてきましたが、それでも「院長である自分が聞くと、どうしても本音が出てこない」という壁にぶつかる医院は少なくありません。これは決して珍しいことではなく、承継期特有の構造的な問題です。

私たちPlumChanがこれまでご相談を受けてきた中でも、院長ご自身が何度面談を重ねても表面的な会話にとどまっていた医院で、第三者であるコーチが面談を代行した途端、スタッフから涙ながらに本音が語られたという事例が複数あります。評価者でも当事者でもない立場だからこそ、話せることがあるのです。院長が悪いわけでも、スタッフが心を閉ざしているわけでもなく、立場の近さそのものが本音を遠ざけてしまうことがあるという事実を、まず知っていただきたいと思います。

PlumChanのスタッフ面談代行サービスでは、医科・歯科専門のコーチングを学んだ担当者が、院長に代わってスタッフ一人ひとりと面談を行い、本音を丁寧に引き出したうえで、院長にとって本当に必要な情報だけを整理してフィードバックします。院長自身が向き合う前に、まず組織の温度感を正確に把握したいという承継期の医院にとって、有効な選択肢のひとつです。

比較項目院長自身が面談する場合第三者による面談代行
本音の出やすさ評価者という立場上、遠慮が生じやすい利害関係がなく本音が出やすい
院長の時間負担診療の合間に確保する必要がある面談自体は代行し、報告のみ受け取れる
組織全体の把握個々の印象に左右されやすい複数名の声を客観的に整理できる

どちらが優れているということではなく、承継期という特殊な時期には、両方をうまく組み合わせることが現実的な解決策になります。

まとめ

承継直後のスタッフ面談がうまくいかないのは、あなたの能力の問題ではなく、信頼関係がまだ薄いという構造的な理由によるものです。ここまでお伝えしてきた原因と対策を振り返ってみましょう。本音が出てこないのは、質問が評価に聞こえてしまうこと、承継への想いが共有されていないこと、そして向き合う時間が構造的に不足していること、この3つが重なっているからでした。だからこそ、最初の面談は聞くことに徹し、前院長への敬意を言葉にし、小さな約束を一つずつ実行していく。この積み重ねが、少しずつですが確実にスタッフとの信頼を育てていきます。

私自身も、家業という特殊な人間関係の中で立場が変わる難しさを味わい、周囲との距離感に悩んだ経験があります。承継期の院長が抱える孤独は、簡単に消えるものではないと感じています。だからこそ、一人で抱えきれないと感じたときは、無理をせず第三者の力を借りるという選択肢も検討してみてください。院長がすべてを一人で背負う必要はありません。まずは無料体験説明会でお話を聞かせてください。

よくある質問

Q1. 承継直後のスタッフ面談はいつ始めるべきですか?

A. 承継後1〜2か月以内、業務に慣れた頃が信頼構築の第一歩です。

Q2. 古参スタッフが本音を話してくれないのはなぜですか?

A. 前院長との関係性が続いており、新院長への警戒心が残るためです。

Q3. 面談で前院長と比較されたらどう答えればいいですか?

A. 否定せず一度受け止め、自分の考えを丁寧に伝えると効果的です。

Q4. スタッフ面談は院長自身が行うべきですか?

A. 関係性が浅い時期は第三者による面談代行も有効な選択肢です。

Q5. 面談の頻度はどのくらいが適切ですか?

A. 承継直後は月1回、落ち着いたら3か月に1回が目安です。

この記事を書いた人

梅田 亮のアバター 梅田 亮 代表取締役

株式会社PlumChan 代表取締役。医科・歯科専門でコーチング技術を用いたコミュニケーション研修やスタッフ面談代行を行い、心理的安全性の高い職場づくりを行っています。

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